■「病的近視」が招く恐れのある怖い症状
病的近視の人は、網膜剝離、緑内障、黄斑症、白内障などを合併症として発症するリスクも上がるのだそう。
「網膜剝離は網膜がはがれて視野が欠けていき、放置しておくと失明に至ることがあります。緑内障は視神経や神経線維が傷んで視野が欠ける疾患です。点眼で悪化を食い止める治療がありますが、これも放置しておくと悪化の一途をたどります。黄斑症も中心部の視野が欠損したり、極端に視力が低下する疾患です」
いずれも、失明につながりかねない重大疾患なのだ。しかし、病的近視は外見からはわからないという難点がある。
「病的近視の判断は、眼球の詳しい状態を見るしかないのです。もしも不安があったら、眼科で眼底検査を受けてみてください。病的近視のリスクがあるかどうかがわかります。たとえば、方眼紙などマス目のある紙を見て歪んで見えないか、見えにくくないかを、片目ずつ確認してください。さらに、次のチェックリストで1つでも該当する人は、眼底検査を受けてください」
ただ、眼底検査は定期健診には含まれていないことも多いので、診療時には必ず近視の進行を確認したいという意向を医師に伝えたほうがスムーズだ。
【「病的近視」チェックリスト 】
□ 柱や床が歪んで見える
□ 暗い場所に入ると見えなくなる
□ 目の前に“飛ぶもの”が見える
□ 夜間の運転時、対向車が見づらい
□ 段差がわからず、転びそうになる
□ 歩いていて人や物にぶつかる
□ 何もないのに光が見える
□ 標識が見づらい
では、病的近視を予防する方法はあるのだろうか。
「まず、目に物理的な刺激を与えないこと。つまり、目をこすったり、眼球に強い圧力を加えないことです。そして、スマホや本を近距離で見ないように。遠ざけて見るようにしましょう」
また、外で遠くの景色を見るのもよいのだそう。
「太陽の光の下で景色を見ることが目にいいといわれています。太陽光がある時間帯に外を散歩したり、遠くを見る時間を長く持つことです。ウオーキングも全身の血流を活性化してくれますので、予防にはとてもいいです」
ふだんから、近くと遠く、左右上下と幅広く目を動かして目の筋肉を使うように心がけよう。
■「病的近視」を予防する色の濃い野菜を積極的に
栄養面でも補給できることがある。
「ルテインという栄養素は、硝子体の周りにある黄斑部や目のレンズである水晶体に多く存在する栄養素です。抗酸化物として目の老化を引き起こす活性酸素の働きを抑制するなど、目を守る働きをしてくれます」
ルテインは、野菜や果物に多く含まれるカロテノイド色素の一種で、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、グリンピース、にんじん、かぼちゃ、アボカド、乾燥プルーンなど、色の濃い野菜や果物に多く含まれる。
1日あたりの標準的な推奨摂取量は6~10ミリグラム。これは小松菜なら約120グラム分だ。ただ、単一の食品からだけでなく、ルテインを多く含む野菜や果物をいろいろ食べることで、効果的に栄養が取れる。
「ルテインを継続的に取り続けることで、加齢による目の疾患のリスクを軽減できるといわれています。私も日ごろから注意して取るようにしていますよ」
目が見えることは健康で長生きするためにもとても大切なこと。異変があれば早めに対応するのはもちろん、ふだんから、なるべくスマホやパソコンから離れる時間を作り、目を休め、いたわる生活を心がけよう。