過酷な夏を終え、頭皮のダメージは深刻に。ごっそり抜けた毛にギョッとしている人も多いだろう。そこで、栄養満点の旬の食材を上手に組み合わせて、抜けゆく毛髪を守ろう。
「秋は換毛期にあたることで、頭皮の環境が正常な方でも普通の2倍近い髪の毛が抜けることがあります。髪の毛は通常1日に50~100本程度抜けるといわれていますが、秋になるとその倍以上の200本ほどは抜けることもあるのです」
こう話すのは栄養学博士の白鳥早奈英先生だ。
ただでさえ秋は抜け毛の季節だというのに、今年は夏の猛暑で連日冷たいものを食べたり飲んだりし、冷えた建物内と暑い屋外との寒暖差を体感したうえに、強い紫外線を浴びるなど、私たちの肉体はさまざまなストレスにさらされた。そのためか、更年期世代の本誌記者も今年の秋は抜け毛が激しい。
「私たちの体は食べているもので作られています。ですから、抜け毛の問題は食事で解決することができます。
特に、旬の食材には栄養分がたくさん含まれています。秋が旬の青魚や季節の野菜、果物などを賢く組み合わせて食べると、髪や地肌を守ることができるのです」(白鳥先生、以下同)
今回、旬の食材を使って抜け毛対策によい食材の組み合わせを白鳥先生に紹介してもらったので、抜け毛が気になる人はチェックしよう。 第一に、髪の毛を作るのに必要不可欠な栄養素はタンパク質。
「髪の毛を作ってくれる土台となる成分は、ケラチンというタンパク質の一種です。しかし、単にタンパク質だけをたくさん取ればよいというわけではありません。
タンパク質の効果を高めてくれるビタミン、ミネラルなどと一緒に取ることで相乗効果が働いてしっかりと栄養が吸収されるので、頭皮のコンディションが整ってツヤのある髪が作られるのです」
タンパク質の効果を高めてくれる働きを持つのは、亜鉛(ミネラル)、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、βカロテン(ビタミンA)など。
「特に亜鉛は重要で、不足すると、タンパク質やDNAの合成がうまく行えなくなり、細胞が作られにくくなって、脱毛、神経障害などが起こります」
野菜や果物の色素成分で、その種類が4千以上もあるポリフェノールには、抗酸化作用、血流改善の働きがあり、こちらも頭皮の環境を整えてくれる注目したい成分だ。
まず秋の食べ物の代表格といえば、サンマ、サバといった青魚。
「サンマもサバも“秋”をイメージさせる食材で、秋にいちばん脂がのっておいしい食材です。サンマと牡蠣を一緒に食べると、牡蠣の亜鉛がサンマのタンパク質の吸収を高め、健康な髪を作ってくれます。レモンをかけるとさらに亜鉛の吸収率が高まります。
柿とサバの組み合わせもおすすめです。柿のβカロテンが青魚に含まれるオメガ3脂肪酸によって吸収されやすくなるからです」
肉類と野菜の組み合わせも取り入れていきたい。
ピーマンと豚レバーは、ピーマンのビタミンCと豚レバーの鉄分を同時に取ることでタンパク質の合成能力を高めるそう。
またピーマン、レバーともに、ビタミンB群のひとつであるビオチンも含まれている。
「ビオチンもタンパク質の代謝を促進してくれ、抜け毛や白髪、皮膚炎などを予防してくれる働きがある、髪や頭皮の健康には欠かせない栄養素です。サプリなどより食品から摂取したほうが効果を発揮してくれます」
玉ねぎと鶏肉の組み合わせについては、玉ねぎの硫化アリルと鶏肉のビタミンB群を一緒に取ることで、より血流が促進されて抜け毛が予防され、良質のタンパク質が健康な髪を作ってくれる。
「きのこ類に豊富に含まれるビタミンDは、ほかの栄養素の合成を助けて、美肌を作る、免疫力を上げる、自律神経を整えるなどの働きをします。健康な頭皮を作るためにも大切な栄養素です」
干ししいたけとタコの組み合わせは、干ししいたけのビタミンDがタコの亜鉛の吸収を高め、健康な頭皮が作られる。
ナッツと栗も秋ならではの組み合わせ。ナッツのビタミンEと栗のビタミンCの組み合わせで、吸収効率が高まり、頭皮の血流を促進して抗酸化作用を高めてくれる。
ポリフェノールは活性酸素から細胞を守る抗酸化作用で地肌の状態を整え、髪のツヤを出すのにも一役買ってくれる。
「なすのアントシアニンは血流を促進し、抜け毛を防ぐ働きがあります。アントシアニンはアルコールと一緒に取ると働きが強まるため、調理に料理酒を使ったり、お酒とともにいただくのもおすすめ」
りんごのポリフェノールは、大根の辛み成分であるイソチオシアネートの血流促進効果を活性化する働きがあるという。
旬の食材には栄養がたっぷり。秋の味覚をしっかり味わいながら、毛髪を守ろう。