■秋の行楽シーズンに向けさらに拡大する可能性が
治療にはマクロライド系の抗菌薬が処方され、比較的早期に回復が見込めるが、2000年ごろからマクロライド系薬の耐性菌が増えてきた。
「そのため日本ではニューキノロン系やテトラサイクリン系抗菌薬も使われるようになっています。ところが、中国、韓国、台湾などアジア諸国で使われる年少児用の治療薬はマクロライド系のみで、一般的に小児用ニューキノロン系薬が使用できない。
さらに海外は日本よりも新型コロナウイルスに対する感染対策の規制緩和が早かったため、マイコプラズマ肺炎の流行も海外のほうが先に始まっています。
感染拡大の背景には海外からの渡航者によってマイコプラズマが持ち込まれたということもあるでしょう」
実際、東京都と周辺の県、愛知県、大阪府、京都府、北海道など、大都市や観光地における感染者数は、ほかの地域に比べて多い。
日本政府観光局によると、今年の上半期の外国人旅行者数は約1,778万人と過去最多で、7~8月も過去最多数を更新し続けている。
これから秋の行楽シーズンを迎え、紅葉を楽しむ観光客で各地ともにぎわうことだろう。そうなると感染も拡大傾向になることが予想される。
「ただ、今流行しているマイコプラズマは強毒株というわけではなく、感染拡大の理由は集団免疫の低下によるものが大きい」と尾内先生は話す。
手洗い、うがい、マスク着用といった感染対策はもちろんのこと、気温が下がると免疫力も落ちやすくなるので、バランスのとれた食事、しっかり休息をとり、ストレスをためないなど、免疫力を高める生活習慣を心がけ、病気を寄せつけない体づくりをしよう。