「3カ月以上、ずっと胃の不調が続いたので、自宅近くの内科を受診し、薬を処方してもらいました。ところが、症状がいっこうによくならない。もしかして、何か重大な病気なのかも……と怖くなり、消化器内科専門のクリニックで検査を受けることにしました。
胃カメラやレントゲン、血液検査などをやった結果、聞いたこともない『機能性ディスペプシア』という診断でした。すぐに治療薬を処方してもらい、2週間ほどで胃の不調は改善されました」(東京都・50代主婦)
食べすぎ、飲みすぎ、あるいはストレスなどによって、一時的に胃が痛くなる経験をしたことのある人は多くいるはず。だが、胃痛、胃もたれ、みぞおちが焼けるような症状などが、週に1回以上の頻度で、3カ月以上続いているという人は、注意したほうがいいかもしれない。
近年、一般的にはあまり耳慣れない消化器系の疾患「機能性ディスペプシア」に悩まされている患者が、全国的に増えているという。機能性ディスペプシアとは、胃の中はきれいなのに、胃の不調が慢性的に続く不思議な病気。具体的にどのような症状が起きるのか。
「胃の内視鏡検査(胃カメラ)などの画像検査では異常が見られないにもかかわらず、みぞおち周辺の痛みや、食後の胃もたれ、少し食べただけですぐおなかいっぱいに感じてしまう(食後早期の飽満感)など、さまざまな症状を呈する病気です。
胃や十二指腸といった上腹部の不調を訴えて消化器内科を受診する人の約半数が、機能性ディスペプシア。今もっとも一般的な病気だといわれています」
こう語るのは、日本消化器病学会専門医で、機能性ディスペプシアの治療に詳しい「日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック」の石岡充彬院長。
病院を受診していない人たちを含めると、国民の10人に1人は、この病気の可能性があるとも……。
発症年齢は20~30代に多いが、40~80代の幅広い年齢層でも患者が増えており、男女比では、やや女性のほうが多いといわれている。病気が発症する原因は何か?
「主な原因としては、ストレスや食事、運動、睡眠といった生活習慣。ほかにも、性格や遺伝的な要素といった、持って生まれた要因など、さまざまな因子が複雑に絡み合って発症するものと考えられています。
また、食あたりのような、ウイルスや細菌などへの感染をきっかけに発症するケースもあります」(石岡院長、以下同)
日本生活習慣病予防協会が、全国の消化器内科医331人を対象におこなったアンケート調査によると、“ストレスが要因”で、今後、日本人の新たな国民病となる疾患として、回答数が最も多かったのが、この機能性ディスペプシアだった。
すでに日本人の多くが罹患している可能性もある“新国民病”の機能性ディスペプシア。もし、慢性的な胃の不調が続くようであれば、この病気を疑い、早めに検査を受けたほうがいい。早期治療によって症状はほぼ改善し、重症化することも少ないそうだ。