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「東日本大震災以降、人々の意識が大きく変わり、家での食事を大事にする人が増えました。それとともに調理家電が売れるようになったのです。さらには、おいしいパンが食べられるなら、高いお金を出してもいいと思う人や、毎日使う炊飯器なのだから高額でもいい、と考える人も出てきました。そんな人たちのニーズに応えようと、家電業界では“新興”のメーカーが、“一芸に秀でた”職人のような商品を作りだしてきたのです」

 

そう語るのは、家電コーディネーターの戸井田園子さん。家電業界では今、いわゆる“大手”ではないメーカーが勢いに乗っている。

 

’03年に設立された「バルミューダ」という企業が昨年発売した「ザ・トースター」は、2万5,000円ほどするのに爆発的な売れ行きを記録して、世間をにぎわせている。「バルミューダ」のトースターの特徴は、スチーム機能を使って、中はふんわり、外はカリッとしたトーストの焼き上がりを実現したこと。

 

「この11月、シャープがウォーターオーブン専用の『ヘルシオ グリエ』を発売しました。トーストを焼く以外の機能もうたってはいますが、これは明らかに『バルミューダ』のトースターを意識していると思われます」

 

また、名古屋の「愛知ドビー」という鋳造メーカーが開発し、今年の7月に売り出した、8万円台の炊飯器「バーミキュラ ライスポット」は、入手まで半年待ちの状態だ。保温機能をあえて廃し、ふっくらとした炊き上がりにのみ、徹底的にこだわっている。ビックカメラのまとめ買い相談員・大熊奈央さんが次のように解説する。

 

「それまで大手の炊飯器メーカーは、土鍋や熱鍋など内釜の材質ばかりを重視していました。それが『愛知ドビー』の炊飯器に刺激されたのか、米の銘柄に合わせて炊き加減が選べる“炊き分け”機能や、釜の形状を変えて熱対流を高めた商品の開発に、より力を入れるようになったのです。さらには『バルミューダ』も来年には炊飯器を出す予定です。家電業界が一気にヒートアップしていきます」

 

大手の家電メーカーに揺さぶりをかけるのは、国内の企業だけではない。

 

「ホットプレートといえば、典型的なファミリー向けの黒い鉄板が一般的です。しかし、最近、オシャレが好きな女性の間で流行しているのが、真っ白いホットプレートの『テーブルグリル・ピュア』。オランダのデザイン家電会社『プリンセス』が手がけた製品は、大皿のようなたたずまいで、ホームパーティなどで、その存在感を発揮します。食材から出る油が中央の穴に落ちるヘルシーさも受けて、SNSなどで一気に広まりました」(戸井田さん)

 

こんな“刺激”に、国内の大手家電メーカーは、どのような手を繰り出してくるのだろうか−−。

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