image

 

春の終わりごろに店頭に並び始め、夏の訪れとともに姿を消す、そら豆。一年中手に入る野菜が多いなか、旬の時期しか食べられない。そら豆は、低温の環境でないと花芽がつかないため、秋にタネをまいて越冬し、春から初夏に収穫する。ハウス栽培は採算が合わないため、露地栽培が基本で、3〜6月ごろにしか出回らないのだ。

 

このそら豆、小さな体にみっちりと栄養素が詰め込まれた、天然の「バランス栄養食」だという。

 

「そら豆は太古の昔から、体力をつけたり、気力を充実させるのに適した野菜といわれていて、人類最古の作物という言い伝えもあります。野菜のなかでは水分が少なく、各栄養素を豊富に含んでいて、バランスがよい野菜といえますね」

 

そう語るのは、女子栄養大学栄養クリニックの管理栄養士、森さやかさん。

 

「特筆すべきはビタミンB1、ビタミンB2が多量に含まれていることです。そら豆はエネルギー源となるタンパク質、糖質が豊富ですが、同時に炭水化物のエネルギー代謝に必要なビタミンB1、脂質やタンパク質をエネルギーに変えるビタミンB2のほか、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸も多く含まれるため、疲労回復効果がとても高いんです。特に疲労がたまっているときには、にんにくと一緒に調理するといいですよ。にんにくの香り成分である硫化アリルがビタミンB1と結合すると、アリチアミンに変化します。そして、お互いの相乗効果でビタミンB1の吸収をさらに高めるんです。疲労回復効果がより高まり、食欲増進にもつながりますよ」(森さん・以下同)

 

ビタミンB1には、乳酸などの疲労物質が体にたまるのを防ぐ働きもある。また、ビタミンB2は、血管を若く健康に保ち、脂質の代謝を促す効果が高い。

 

「ビタミンB2は、余分なコレステロールが血管壁に付着するのを防ぐ効果もあります。さらに、レシチンという成分が悪玉コレステロールを下げるので、動脈硬化を防ぐなど、生活習慣病の予防効果も期待できます。レシチンは肝臓の機能を保護するんですよ」

 

そら豆はお酒のおつまみとして、味のみならず、栄養面でも最高の相棒なのだ。

 

「ビタミンB群の一種で、赤血球の生成や細胞新生に重要な役割を担う葉酸、抗酸化作用のあるビタミンCも含まれるので、美容効果、美髪効果も期待できるんです。さらに、女性が積極的に摂取すべき鉄分もあり、中年以降の女性にこそ、たくさん食べてほしい野菜といえます」

 

食物繊維が多いことも大きな特徴の1つです。食物繊維の効果で便秘が解消すれば、肌荒れ改善・美肌効果も期待できます。また、捨ててしまうことの多い薄皮には、豆自体よりも食物繊維が多く含まれているんですよ。食感が気にならない場合はそのまま調理し、よくかんで食べるといいでしょう」

 

そら豆は、素材そのものの味がしっかりしているのも特徴だ。

 

「そら豆には、グルタミン酸やアスパラギン酸といった、うま味成分のアミノ酸が多く含まれているので、豆自体の味をしっかりと感じられるんですよ。塩ゆでしただけでもうま味を感じ、おいしくいただけるのは天然のアミノ酸パワーなんです」

 

ゆでたり蒸したりするだけでおいしさを実感できるのはこのためだ。栄養は抜群なのに、油を使わないヘルシー調理でも食べられるのはうれしいところ。

 

「さらに、カリウムを豊富に含んでいるので、余分な塩分を排出してくれますし、マグネシウムには血圧を調整する効果があるので、高血圧の方にもおススメです。むくみ解消効果もありますよ」

 

バランスよく栄養が詰まったそら豆は、1日にどのくらい食べるのがベストなのか。

 

「ゆでたもので17〜18粒を目安にしてください。ゆでたそら豆100gが112キロカロリー。100gで24粒ほどなので、1粒約4.7キロカロリーですね。低カロリーというわけではありませんので、食べすぎには注意しましょう」

 

旬のこの時期にこそたくさん食べて、緑色の若豆のようにつやつやとキレイに、そしてピチピチと元気に毎日を過ごそう!

関連カテゴリー: