子供が実家から離れて独立した家では、親が子供の住まいに同居したり、介護施設へ入居などすると、誰も住まなくなった実家をどうするかが問題になる。

 

「『手放したくない』親は多いと思いますが、そのまま所有する、賃貸に出す、売却する――という3通りでは、維持に必要なお金が変わってきます」

 

こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。それぞれのケースのポイントを荻原さんに聞いた。

 

〈そのまま所有する〉場合、固定資産税が必要だ。空き家でも変わらない。税負担より大変なのは管理。空き家のまま放置すると、家の老朽化だけでなく、ゴミの不法投棄や放火など防犯面でも問題を抱えることになる。空き家はここ20年で倍になったといわれ、空き家の適正管理条例を設ける自治体も増えてきているそうだ。

 

「遠方に住み自分で管理できない方には、不動産会社や警備会社の空き家管理サービスがあります。月1回の見回り訪問や郵便物の転送などが、月約1万円から契約できます」

 

〈賃貸に出す〉場合には、契約期間を定め、その期間が過ぎると退去しなければならない「定期借家権」を設定しておく。問題のある借り手が居座り続けるといった心配がなくなる。

 

「家賃での利益が年間20万円を越えたら、確定申告が必要です。リフォーム代金や不動産仲介料など経費の領収書は保管してください。最近の『借主負担DIY型』契約では、家主はリフォームせずに、その分安い家賃で貸します。借り手はリフォーム費用を負担しますが、自由に改装できるというもの。専門家に相談して、契約を交わしましょう」

 

〈売却する〉場合、家を売ると、売れた金額から、買ったときの家の代金とその手数料や売る際の費用を引いた譲渡所得に対して税金がかかる。

 

「ただし、親が住んでいる家を売ったときは、譲渡所得から3千万円控除されます。注意点がひとつ。『実際に住んでいる家』が条件ですから、住まなくなって3年目の年末を越えると、3千万円の控除はなくなります」

 

親が亡くなれば、相続することになる。相続税は、来年から非課税枠が引き下げられ、課税対象者が増える。さらに、子供2人で相続する場合、今年中なら7千万円まで非課税だが、来年からは4千200万円までに変わるので、要注意とのこと。

 

「空き家の所在地や広さ、親やきょうだいの思いによって、それぞれ選択が異なるでしょう。空き家周辺の方に迷惑をかけず、自分たちにとっての得策は何か。親戚が集まる時期に、じっくり相談されてはいかがでしょうか」

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