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「超高齢社会を迎えた日本では、高齢者のおカネはあちこちから狙われています。親が認知症になったら、あるいは自分自身が倒れたりしたら……巧みなセールストークで高額商品を買わされたり、振り込め詐欺に遭ったり、危険がいっぱい。それが元で『老後貧困』に陥らないための準備や学習のリミットを、私は『65歳』と考えています」

 

『老後貧困から身を守る』の著者で、司法書士の細沢祐樹さんが言う。65歳といえば、平均寿命がどんどん延びているわが国では「まだまだ元気!」「現役バリバリよ」という方も多いだろう。しかし細沢さんは、その65歳が、老後貧困に陥らないギリギリのラインだという。

 

「年齢の目安としては、’00年に施行された介護保険制度を受けることができる最年少の年齢が、満65歳ということがあります。それから、老齢基礎年金を受けられる年齢でもあり、多くの企業で定年退職を迎える年齢でもあります。70代、80代になってくると、だんだん体が動かなくなったりしてきますので、その前に準備を、ということです」

 

介護保険制度とは、認知症や寝たきりなどで介護が必要になったとき、市区町村に申請して要介護認定を受け、その度合いに応じて在宅サービスか施設サービスを受けられる制度のこと。

 

「でも、65歳から受けられる制度だからといって、何の準備も知識もなければ、いざというときに困ってしまいますよね。実際、私が接してきたクライアントさんのなかにも、そういう方がいました。私の提案は、自分が65歳になる前に知っておくことで、親や自身の『そのとき』に備えてほしいということなんです」

 

そこで、細沢さんに「65歳までにしておきたい10の準備」を教えてもらった。

 

【1】今すぐ貯金を始めよ!

いざというときにいちばん強いのは現金。貯蓄計画の作成もしておこう。

「言いたくはないですが、おカネがあれば、ある程度のサービスは受けられます。ですからここは単純に『貯蓄に励みましょう』と言いたいですね」

 

【2】今の家計の状況すべて書き出せ!

現在の財産や将来の収支の予測について、家族の分も隠さずオープンにして計算。

「現状の自分を知ることが大切です。持っている財産の状況、シングルなのか、お子さんやお孫さんがいらっしゃるのか……。おカネがメインになるとは思いますが、どういう親族が自分の面倒をみてくれそうだとか、現時点で把握しておいてほしいのです」

 

【3】自分より年下の「信頼できる人」を作れ!

子供、子供のいない人は親族や知人。自分の老後を支えてくれる人を見つけておこう。

「信頼できる人が、同世代や上の世代にしかいないと。『いずれ、どちらかが先に−−』という心配が先に立ってしまいます。できるだけ若い世代、お子さんや甥、姪などに頼れるようにしておきましょう」

 

【4】高額の買い物はひとりで決めるな!

一見、信頼できそうな営業マンでも、じつはぼったくり商品のセールスマンということも。

「高齢になると、ご自身では元気なつもりでも、どこかでゆるんでしまうもの。虎の子の預貯金を言葉巧みに取られることもあるので、高額の買い物はひとりで決めないほうがいいでしょう」

 

【5】他人に自分のおカネの話はするな!

おカネがあると思われると、せびられたり、最悪の場合、盗まれたりすることもある。

「冠婚葬祭などで、人よりも出すおカネがちょっと高めになる人がいます。そうすると、『この人、おカネが入ったのかな!?』と思われて、『貸してくれ』というようなおカネの無心の話が来たりします」

 

【6】認知症になるな!

生活習慣を見直すなどして健康管理に気を使うことで、認知症になるリスクを減らす。

「寝たきりで長生きするよりは、健康で長生きしたほうがいいので、健康管理をしっかりしましょうということです。できるだけ認知症にならない生活習慣を心掛けましょう。料理が予防にいい、本を読むのがいいともいわれています」

 

【7】認知症になったときの対策をしておけ!

どんなに気を付けても認知症になってしまうことはある。そのための対策をしっかり。

「軽い認知症の場合は、社会福祉協議会の『日常生活自立支援事業』が役に立ちます。日常的なおカネの出し入れ、預貯金通帳や印鑑などの預かり。ほかにホームヘルパー、入浴サービスなどの申し込みや契約手続きもしてくれます」

 

【8】高齢者サポート制度の情報を見逃すな!

最も頼りになるもののひとつが成年後見制度。制度の仕組みや手続きを勉強しておく。

「成年後見制度には、種類があります。認知症で判断能力が衰えてしまい、この制度をすぐに必要とする方は、『法定後見制度』が適用されますが、まだ判断能力のあるうち、将来のために契約しておく『任意後見制度』もあります」

 

【9】自分がどういう老後を送りたいのか考えよ!

老後の生活スタイルを書き出すことで、必要なおカネもわかる。市販の『エンディング・ノート』もおすすめ。

「引退後の自分の住む場所なども含めて、自分はどうしたいのか考えておきましょう」

 

【10】老後に入りそうな施設について調べよ!

自分が入所するかもしれない施設については、事前に見学に行くなどして知っておく。

「高齢者向けの施設はさまざま。入所費や月の費用が高いからといって、必ずしもいい施設とは限りません。体験入所や、後見人といっしょにチェックするなど、必ず事前に調べましょう」

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