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内閣府が行った「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年・対象は全国60歳以上の男女)で、《介護を受けたい場所》は男性の約4割、女性の約3割が“自宅”を希望している。国も’25年に向けて、病院のベッド数を15万床削減し、数十万人を自宅などで介護してもらう方向に舵を切っている。

 

デイサービス、デイケア、小規模多機能型居宅介護……。聞いたことはあっても詳しく理解していない人が多いというのが介護サービス。だが、知識不足は自らの首を絞める結果になるという。

 

「受けられるはずの介護サービスを逃している人があまりに多い。動けなくなってからリハビリを開始しても、後悔が残るはずです」

 

こう語るのは、くらしとお金の学校代表理事・長沼和子さん。在宅介護では、“そのとき”最適な選択をすることが重要だという。そこで、『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』著者の岡本典子さん、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』の著者で介護施設コンサルタントの齋藤直路さんに、在宅での介護サービスを選ぶポイントを教えてもらった。

 

【1】まず自宅の改修から検討を

 

「玄関前にスロープや手すりを設置するなど、自宅を改修する場合、上限額20万円までなら介護保険が使えますので、自己負担額は1割(一定収入以上は2割)ですみます。まずは体の状態、家の動線を理解しているケアマネジャーに相談してください。そのうえで市町村役場に申請し、登録業者を選んで改修工事を依頼します」(岡本さん)

 

【2】多様な居宅サービスを駆使

 

日常生活が可能なものの、やや困難が生じてきたら、通所介護(デイサービス)だ。

 

「自宅まで送迎車が来て、一日を入浴や体操、リハビリ、昼食やレクリエーションを楽しむというもの。だいたい朝9時くらいから16時くらいまで過ごします。高齢者のための“学校”のようなイメージ」(齋藤さん)

 

ここで見てほしいのは、スタッフのケアだという。

 

「ご飯を食べさせてくれる、着替えを手伝ってくれる施設ばかりが“親切”だと思わないように。よい施設は、運動機能が落ちないように過剰なサポートはしません」

 

リハビリが必要なら、リハビリのサービスを強化している通所・訪問リハビリテーション(デイケア)施設の利用が効果的だ。

 

「理学療法士や作業療法士、管理栄養士がおり、歩行機能の改善や、筋肉向上、栄養指導をするために通います」

 

【3】早朝・夜間対応の訪問介護も

 

独力で家事ができない、入浴に介助が必要な要支援以上の独居者であれば、ヘルパーに自宅に来てもらう訪問介護が利用できる。

 

「元気な同居家族がいる場合はサービス提供が認められないこともありますが、入浴の介助などは慣れていないと難しいのでケアマネジャーに相談を」(齋藤さん)

 

サービスの提供時間は8〜18時くらいまでが一般的だが、早朝や夜間対応をしてくれる事業所もある。

 

【4】要介護3でも在宅が可能に

 

要介護3以上で認知症の診断があれば、デイサービス、訪問看護、そしてショートステイ(短期間の入所)を同時に提供してくれる、小規模多機能型居宅介護が選択肢に。

 

「要介護2以下でも利用できますが、現実的には、利用者の多くが要介護3以上の認知症の方です」(齋藤さん)

 

要介護3以上で高い頻度で介護が必要な人のために、増加していくとみられているのが定期巡回・随時対応型だ。

 

「自宅にいながら、専用の機器で連絡するとオペレーターにつながり、必要に応じてヘルパーが派遣され、毎晩決まった時間での巡回もある。自宅で施設と同様のサービスが受けられます」

 

【5】訪問診療・看護で自宅看取り

 

「いま訪問診療や往診、訪問看護が受けられる地域が増えてきています。自宅での看取りシステムが進んでいるといえます」(岡本さん)

 

注意したいのは主治医の存在を家族に知らせておくこと。

 

「治療しても病状改善が望めない場合、約9割の人が、延命治療はせずに自然に任せた死を迎えたいと希望するといいます。しかし、要介護者の容体が悪化したとき、家族が主治医の存在を知らなければ、主治医を飛び越して救急車を呼んでしまい、意思に反した延命治療を受けてしまう可能性があります」

 

必ず家族間の情報共有を図っておくべきだろう。

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