暑い夏には、怖〜い話でヒヤッととしませんか。恐怖マンガに造詣の深いコラムニスト・ペリー荻野さんと、シンガー・ソングライターの谷山浩子さんに、おすすめの作品を選んでいただきました。

 

ペリー荻野(以下ぺ)「ベテラン、日野日出志先生の作品は絵が強烈。『地獄変』など、読んでるときはたいへんでしたが、意外にストーリーは記憶にないんです」

 

谷山浩子(以下谷)「日野作品はグロテスクで迫力がありますよね。怖いマンガにも、体が切り刻まれたりする“痛い”怖さもあれば、化け物が迫ってくる怖さ、不思議でよくわからない怖さなど、系統があると思います」

 

ぺ「さらに少年ものと少女ものもあって。『恐怖新聞』『エコエコアザラク』など少年マンガは連載ものが多かったんです。『エコエコアザラク』はとりあえず主人公・黒井ミサが黒魔術で決着をつける。黒井ミサは佐伯日菜子はじめ多くの女優さんが演じていますが、谷山さんはあくまでマンガ派ですか?」

 

谷「映像作品は突然、ダーンと怖がらせるので、苦手なんです。マンガなら自分のペースで盛り上がれますから(笑)」

 

ぺ「『来るぞ来るぞ』と覚悟して読めると」

 

谷「覚悟しているのに本当に怖くて、とても枕元に置けないのは、山岸凉子先生の作品です。『わたしの人形は良い人形』は、呪われた人形が捨てても焼いても、戻ってきて不幸を呼ぶ、という話。繊細で絵がうまいので、笑えない」

 

ぺ「『鬼』も怖い!江戸時代の飢饉で、人が人の死肉を……」

 

谷「舞台は現代なんですが、若い人が禁断の柵を乗り越えて入ると、そこが江戸時代の現場で、足をつかまれたり」

 

ぺ「山岸先生といえば、華麗なバレエマンガの大家なのに、恐怖の描写も天才的です」

 

谷「もうひとり、私が大好きな諸星大二郎先生の『不安の立像』は、理解してもらえない恐怖です。電車に乗ると、いつも人の大きさくらいの黒いものが見えて、主人公は気になって正体を探りに行く。ほかの人にも見えているのに、みんな“ああ、あれね”と気にしないんです。ホラーというより、現代の不安を描いた名作だと思います」

 

ぺ「諸星先生は『栞と紙魚子(しおりとしみこ)』シリーズ、『妖怪ハンター』といった土着の話や伝奇的な作品も多いですね。私はこれまででいちばん怖かったマンガは望月峯太郎先生の『座敷女』ですね。執拗に狙った相手を追い詰める女性の話で、短編なのに怖くて」

 

谷「私が挙げた山岸先生、諸星先生も、恐怖マンガはみんな短編にいいものが多いです。それは声を大にして言いたい」

 

クールダウンしすぎて、眠れなくならないように……。

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