「年々お客さんが減り、どこまで書店を続けるのかが家族の話題の中心。このまま続けていても好転することはないだろう、ならば最後に何か面白い書棚を作ってみよう、という感じで始めました」

 

そう語るのは、世界一の本の町、東京・神保町にある姉川書店の姉川二三夫社長(65)。15坪ほどの店舗の一角に、猫本専門店「神保町にゃんこ堂」がオープンしたのは’13年6月のこと。発案者は、姉川さんの長女・ユウコさんだ。

 

「オープンして1カ月くらいは、ボチボチとお客さまが来てくれる程度。その後、ネットニュースで取り上げられてからは、猫好きの方々に一気に存在が知られるようになり、日曜日は店内が人でいっぱいに。それまで土曜日は休んでいましたが、開けることにしました」

 

店内には、猫関連の書籍だけではなく、トートバッグやポストカードなどの猫グッズも販売。愛猫家にはたまらない空間は、難しい顔をした人たちが多かった古書店街に、新たな客層を生んだ。

 

マニアの期待に応えるべく書籍をそろえるのは、ユウコさんが担当。店長のリクオ君(11歳・ほぼ不在)もFacebookでの広報活動を担当している。

 

「町の本屋が大型書店やネットショップに食い込めるとは到底思えません。でも、小さい書店だからこそ本と料理、書店とカフェなど展開しやすいのです。また、大型書店があるのに、わざわざ来ていただいたお客さまには、漫画家のくまくら珠美さんがデザインした、オリジナルブックカバーを用意しました。この店にしてからお客さまとの会話も増え、仕事が楽しくなりました」

 

レジを担当する奥さんと共に、お客さんとのにゃんこ談義に花が咲くとか。「にゃんこ堂」の人気の秘密には、猫本以外にも、夫妻とのたわいのない会話も入っているようだ。

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