ついついやってしまうムダ遣いの悪いクセ。やめられない原因は、私たちの脳の働きの特徴からきているそう。正しい対処法で悪循環に歯止めをかけよう――。
ことあるごとに「最近、お金を使いすぎてマズイ……」と危機感を覚えるものの、目の前に欲しいものがあると、パッと飛びついてしまうという人は多い。
「脳には『放っておくと浪費する』という残念なクセがあります。ムダ遣いがやめられない、お金がたまらない、というのは残念なクセが支配する“ビンボー脳”が原因です。このクセを意識的に改めれば、自然と浪費は防げます」
そう語るのは、菅原脳神経外科クリニックの菅原道仁院長。菅原院長によれば、私たちがついついやってしまうムダ遣い習慣は、脳科学の観点から説明できるのだという。
「脳の発達過程を見ていくと、赤ちゃんが生まれてから初めにすることは、お母さんが笑ったらつられて笑うように模倣、つまりまねをすることなのです。これは脳の『ミラーニューロン』という神経細胞の働きによるもので、大人になってからも他人が持っているものが衝動的に欲しくなるのも同じなのです」(菅原院長・以下同)
“ものまね神経”のミラーニューロンには、他人と「比較」したがるという特徴も。「人と違うものを持ちたい」と思いはじめると、妥当な予算の範囲外にある高級ブランドに手を出してしまったりするので要注意だ。
「最近では、そうした見えを張りたくなる行動に、SNSが拍車をかけています。高級店のディナーや、おしゃれな服を着た自撮りの写真をアップしたい欲求が出てきます。そうやって気持ちが高ぶると、脳内に神経伝達物質『ドーパミン』が分泌されます。この物質は承認欲求と関連していて、『いいね!』を押してもらえるとうれしくなり、また浪費をして……とエスカレートしてしまうのです」
ムダ遣いにつながる“残念なクセ”を脳科学の観点から改めるには、“メタ認知”が有効だという。
「メタ認知とは自分の行動を客観視することです。たとえば、店頭で『10個買えば1個おまけ』というPOPに飛びつきそうになったとき、『そんなに買っても使い切れるかな』と一瞬、冷静になって考えると、そのあおりにつられていると気づくことができます」
ドローンで自分を空撮するイメージで、行動を俯瞰することがポイントだという。「メタ認知」をONにしてムダ遣いを防ぐ買い物ルールは次の4つ。
【1】レジに行く前に店内を1周する
【2】カゴに入れた商品の欠点を挙げてみる
【3】スマホを見ていったん頭を切り替える
【4】店員の誘いを購入のきっかけにしない
「ほんの数分でいいので、自分をレジから遠ざけること。レジに行く前に店内を1周すると、脳の前頭前野が働き、理性的に物事を考えはじめ『じつは必要ないかも?』と思えるようになります。また、カゴに入れた商品の欠点をあえて挙げてみる。けなすとドーパミンが出なくなり衝動買いをストップすることができます。タイムセールなど『残り時間◯分!』と言われると駆け込んで商品を買いたくなりますが、そんなときはスマホなどを見ていったん頭の中を切り替える。これは臨床心理学で思考停止法というテクニックです」
あなたの買い物も、ビンボー脳が悪さをしていないか、一度日ごろの消費行動を見直してみよう。