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「相続で争うのは、お金持ちだけだと思っていませんか。相続トラブルのうち、およそ半数は1,000万円以下の遺産を巡るものだといわれています。そして、親族同士がもめる“争族”は、他人同士の争いよりも激しくなることも多いんです」

 

そう語るのは、これまで約3,600もの家庭の相談を受けてきた遺言・相続の専門家の江幡吉昭さん。銀行勤務時代に顧客の相続争いを経験したことから専門家の必要性を痛感。遺言・遺産問題の総合サイト「遺言相続.com」を運営している。

 

「司法統計のデータでも、遺産の分割を巡る争いは、平成20〜27年の7年で23%も増加しています。うちのきょうだいは仲がよいので大丈夫と思っている家族ほど、争いに発展することも多いのです」(以下、「」内は江幡さん)

 

それまで問題なくやってきた親族が、遺産相続をきっかけに“争族”になることは多いという。しかも、意外な理由で……。江幡さんが“争族”の実例を教えてくれた。

 

【争族1】愛人の子の死後認知に、妻は“生命保険”で対抗

 

「私が受ける相談でも、夫の不倫による女のドロドロ“争族”バトルは多いんです」

 

妻子を残し、がんで亡くなった男性には、20歳年下の愛人との間に隠し子がいた。

 

「愛人に子どもが生まれたことを打ち明けられた妻は、『離婚しない・愛人とは会わない・認知しない』を条件に夫婦関係を維持しました」

 

約束にもかかわらず、隠し子と会っていた夫。亡くなると、妻に内緒だった“計画”が明らかに。

 

「夫は、隠し子を認知するという公正証書遺言を書いていました。この『死後認知』で、その子どもにも、最低限認められた権利である遺留分の相続ができることに……」

 

だが、妻は夫の“計画”をお見通しだった。

 

「不倫発覚直後から家計の管理権を握った妻は、夫を高額の生命保険に加入させ、夫の収入から掛金を払っていました。受取人はもちろん自分と自分の子ども。死亡保険金は原則相続財産にはならないので、愛人の子に相続させる必要はありません」

 

結果、愛人の子の相続分を大幅に減らすことに成功した。

 

【争族2】“ゴミ実家”を相続放棄でも片付け費用100万円が

 

疎遠だった父を亡くした明美さん(33・仮名)。母の死後、父はゴミをため込むようになり、実家はゴミ屋敷と化していた。

 

「貯金どころか、借金があることも発覚。明美さんは夫のアドバイスで、資産も借金も相続しない『相続放棄』を決断。これで解決したと思っていたんですが……」

 

ところが後日、実家の町内会長から「ゴミ屋敷を片付けてくれ」と連絡がきたのだ。

 

「相続放棄をしたからといって、民法上、空き家を含む相続財産の『管理責任』まで免れられるわけではありません。ほかにきょうだいのいない明美さんは、結局、100万円を負担して、業者に実家の片付けを頼むはめに」

 

ゴミ屋敷だけではなく、老朽化した家屋など、“負の不動産” がトラブルの種になることは多い。

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