国税庁によれば、’18年に確定申告した2,221万人のうち、約6割の1,305万人が還付申告をしていて、4年連続増え続けている。確定申告は、前年の所得を申告して税額を確定させる手続きのこと。会社員の場合、給料から税金が天引きされて、年末調整で清算されているので関係ないと思いがちだが……。
「じつは会社員にも確定申告が必要な人がいます。年収2,000万円を超えた人、20万円を超える副業の所得がある人です」
そう語るのはファイナンシャルプランナーの大江加代さんだ。年金収入とは別に、年20万円を超える所得のある年金生活者も確定申告をする必要がある。正しく行わなかった場合、後から多めに税金を取られることにもなるのだ。そんなめんどうくさい確定申告。
「しかし、する義務がなくても、申告すれば払いすぎた税金が戻ってくることがあるんです」
サラリーマンは給料から、所得税が源泉徴収されている。この税額が“正しい税額”よりも多い場合、その差額が還付されるのだ。
「所得税額は、収入から基礎控除や給与所得控除、配偶者控除など、各種控除額を引いた金額である課税所得に、その額に応じた税率をかけて、導き出されます。つまり、控除額が大きく、課税所得が小さくなれば、税金は少なくなるのです」
じつはサラリーマンの給与から源泉徴収されている所得税はその年の“見込み額”。年に1回、12月に年間の収入が確定した時点で“年末調整”で清算して、本来の税額との差額分を、会社員に還付したり、追加徴収したりする。
「配偶者控除や扶養控除、各種保険控除などは年末調整で申請できます。しかし、そこで申請し損なった場合や、医療費控除や寄付金控除など年末調整で処理できない控除は確定申告をしないと、課税所得に反映されないのです」
新しい課税所得で計算し直した所得税の額と、すでに払った額の差額が還付されることになる。この申告を還付申告という。
「確定申告の時期は、今年は2月17日〜3月16日ですが、還付申告に関しては、年明けから受け付けています。4月ごろまでには還付金が振り込まれるはずです」
さらに、住民税は前年度の課税所得によって決まるので、還付申告することで、こちらの税額も安くなる。
はたして、自分も還付申告できるのか、知りたい人は次のチェックリストをやってみてほしい。
【医療】該当するのは、サラリーマン/年金生活者
□この1年に手術を受けるなど、医療費をたくさん使った=「医療費控除」
年間10万円超、または年間所得の5%以上を超えないと控除できない。家族全員分の医療費を合算できる。また病院までの交通費など、医療を受けるために、必要な経費も計上できる。
□風邪薬やうがい薬などドラッグストアでたくさんの薬を買った=「セルフメディケーション税制」
家族全員分を合算して1万2,000円を超える必要がある。予防接種や定期健康診断などを受けていること。対象の市販薬はレシートに印がつけられている。ただし、医療費控除またはセルフメディケーション税制どちらかしか受けられない。
□歯医者に通院した=「医療費控除」
医療費控除に合算できるが、審美的な目的の施術は該当しない。
【介護】該当するのは、サラリーマン/年金生活者
□親族や自分が介護サービスを利用している=「医療費控除」
介護費用も医療費控除に計上できることがある。対象になる項目は細かく決まっているので、ケアマネジャーに相談しよう。
□介護用の紙おむつを使っている=「医療費控除」
必要だと認められれば、紙おむつも医療費控除に計上できる。
□バリアフリーのリフォーム工事をした=「バリアフリーリフォーム減税」
50歳以上である、または親族に高齢者がいることなどの条件がある。さらに、対象となる工事も決まっている。工事前に確認したほうが安全。
【寄付】該当するのは、サラリーマン/年金生活者
□ふるさと納税をした=「寄付金控除」
ほかに確定申告する項目がなく、寄付先が5つ以内であれば「ワンストップ特例」により確定申告する必要はない。
□年間で2,000円以上寄付をした=「寄付金控除など」
公益社団法人や認定NPO法人、政治団体など認められた団体への寄付金の一部を控除できる。受領書のない街角募金はNG。
【住宅】該当するのは、サラリーマン/年金生活者
□憧れのマイホームを手に入れた=「住宅ローン控除」
1年目の場合は確定申告する必要がある。2年目以降は会社員の場合、年末調整で処理できる。
□台風やゲリラ豪雨で家が壊れた=「雑損控除」
損失額が大きく、所得金額から控除しきれない場合は、3年を限度に繰り越しOK。
□5年以上住んでいるマイホームを売却したが、住宅ローンが残り、損が出た=「譲渡損失の繰越控除」
損失分を最大3年にわたって控除できる。
【仕事】該当するのは、サラリーマン/年金生活者
□専門学校に行くなど自腹で多額の自己投資をした(サラリーマンのみ)=「特定支出控除」
給与所得控除の半分を超えた分を申請すれば戻る。ただし、年収500万円の場合、給与所得控除は154万円なので、その半額の77万円以上であることが必要。
□仕事・パートの給与が201万円未満だが、夫の会社に配偶者控除の届けを出していない=「配偶者特別控除」
2018年から配偶者特別控除の上限額が201万円に改正されたが、知らずに手続きをしていない人が多くいる。
【退職】該当するのは、サラリーマン
□年の途中で退職した=「所得控除」
毎月の給与から所得税が源泉徴収されているが、この徴収額は「税金の見込み額」。年の途中で退職した場合、実際の額はもっと低くなるので得する可能性が。
□退職金をもらったが、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない=「退職所得控除」
税金を払いすぎている可能性があるので、確定申告をしたほうがいい。
【生活】該当するのは、サラリーマン/年金生活者
□国民健康保険を現金などで払っている=「社会保険料控除」
現金や口座振替などで払っていて、収入から「社会保険料控除」がされていない場合はやること。
□年金生活だが、生命保険などの保険料を払っている(年金生活者のみ)=「生命保険料控除」
保険の加入時期や支払金額、種類によって異なるが、最大12万円の所得控除を受けられる。
□現金や家具が盗まれた=「雑損控除」
災害や盗難にあった場合、年末調整では雑損控除できないので、確定申告で還付を受ける。恐喝や詐欺などはNG。貴金属や骨とう品などぜいたく品や事業用資産は認められない。
□熟年離婚または死別するなど家族構成が変わった=「寡婦控除・寡夫控除」
27万円の控除を受けられる、添付書類などは必要なし。
【運用】該当するのは、サラリーマン
□10月以降にiDeCo(個人型確定拠出年金)をはじめた=「小規模企業共済等掛金控除」
書類が間に合わず、年末調整で控除されていない。10〜12月の3カ月分を確定申告するとお金が戻る。
※以上に当てはまらなくても、確定申告をすれば、還付される例もある。また、条件が細かく決まっているので、少しでも不安があれば、税務署や税理士などに相談しよう。
インターネットはもちろん、スマホでも確定申告ができるようになった。また、この時期は無料の相談会が、税務署や市役所で開かれていることも多い。
うちはサラリーマン家庭だから、年金暮らしだから確定申告は関係ないと思っていると、意外な損をしているかも……。一度、チェックリストで確かめてみてはいかが。
「女性自身」2020年2月18日号 掲載