「“人生の下り坂”だなんて、それは大間違い。現代の60代はまだまだ元気だもの。80歳までは“おーい、活動しよう”の老活期です」
穏やかな笑顔で語るのは、昭和女子大学理事長の坂東眞理子さん。人生100年時代の新たな生き方を提案する著書『老活のすすめ』(飛鳥新社)が話題となっている。
「これまで日本人は、家族のために全力で働いて定年を迎えると、いきなり“老後”へと移行していました。けれど、これからの時代は“老活期”があってしかり。働き方や人との関わり方を少し変えながら、自由にやりたいことをして過ごす時期です。一般的にいわれる『老後のために2,000万円』の貯蓄がなくたって、生活が下流になるわけではありません。体も心もまだ元気ですから、週に20時間でも、年に100万円でも、“ちょい働き”すればいいだけのこと。そして、時間に余裕ができたぶんは、自分の好きなことをして豊かな人生を味わうーーそのためにも、50代のうちから老活期を意識して“さしすせそ”の準備を始めてみましょう」
■老活で意識したい「さしすせそ」
【さ】さびない心を目指す
体だけでなく、感情や感性までさびてしまわないように。新しい環境に身を置き、人と出会い、自分をみがき続けよう。
【し】情報リテラシーを持つ
情報社会だからこそ、その真偽や要不要を見極めたい。他人の情報に惑わされず、自分たち夫婦の価値観を見直そう。
【す】“好き”を増やす
年齢とともに心はかたくなり、“好き”や“感動”が減少しがち。意識的に好きなモノ・人を見つけ、機嫌よく暮らそう。
【せ】世話をする
世話をされるより、する人が幸せになる。子や孫、他人の孫(たまご)をサポートして、必要とされる人になろう。
【そ】ソーシャルディスタンスを保つ
人間関係は、精神的にも空間的にも適正距離を保つ。べったりでは互いに負担。親子や夫婦間でも伸び縮みさせよう。
私たちの心身は加齢とともにさび、どんどん鈍くなってしまう。
「だから、意識して新しい出会いを求め、つねに心はプラチナの輝きを持ち続けたいですね(さ=さびない心を目指す)。そして、情報社会においては、取捨選択する冷静さが必要。自分たち夫婦にとって何が大切か、価値観を見つめ直すことも大切(し=情報リテラシーを持つ)。価値観や好みを再確認できたら、その中に身を置いて機嫌よく過ごし(す=“好き”を増やす)、できた時間は身近な人をサポートし(せ=世話をする)、かといってべったりしすぎない(そ=ソーシャルディスタンスを保つ)。そういった意味では“定年帰農”のような暮らしも選択肢のひとつです」
「女性自身」2020年11月10日号 掲載