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男性と比べて平均寿命が約6年も長い女性にとって、夫の死後の人生をどう生きていくのか、というのは避けては通れない問題です。いずれ来る「その時」を乗り越えるためにきっちり備えておきましょうーー。

 

■ぼけてしまった夫名義のお金はどうやって使うの?

 

夫が認知症になると、たとえ生きてはいても、それまでと完全に“同じ夫”はいなくなってしまうこともある。適切な判断力がなくなってしまえば、財産の管理もできなくなったり、有効な遺言が作れなくなったりすることも。とはいえ、夫の財産は法的には夫のものであり、夫が自分で管理できなくとも、妻が勝手に使うことはできなくなるのだ。そんなときに利用できる制度を、相続に詳しい弁護士の竹内亮さんに聞いた。

 

「もっとも一般的なのが『任意後見制度』。将来、判断能力が衰えてきたときに備え、財産や身の回りのことを管理する後見人を決めておく制度です。妻を後見人としておけば、契約で定められている範囲内でお金も使えるので、夫が認知症になって急に生活費が払えなくなるような心配はありません。ただ、法的には夫の財産は夫のもの。自分のために高額な宝飾品を買うことなどはNGです」

 

なお、夫が認知症を発症すると任意後見制度の契約を結ぶことができないため、家庭裁判所が後見人を選任する「成年後見制度」を利用することになる。

 

「任意後見制度と比べると柔軟性に欠けるのが弱みで、不動産などの大きな財産を動かしたいときに厄介です。自宅を売却して夫婦で老人ホームに入りたくても、売却に家庭裁判所の許可が必要になり、手続きが煩雑になります。ほかに’07年に明文化された『家族信託』という新しい制度があり、不動産や会社の株式など大きな財産を管理したい人に向いていますが、専門家の手が必要なので、継続的な費用がかかります」(竹内さん)

 

■離婚を検討中。確実に「年金」を分割したい!

 

離婚をすれば、その後、夫は自分の人生の舞台から消えることに。とはいえ、夫婦として過ごした期間に築いた財産は分与され、離婚後の生活にも大きく関わってくる。そのひとつが厚生年金の「分割」。税理士でファイナンシャル・プランナーの福田真弓さんが説明する。

 

「『年金分割』とは、婚姻期間中に納めていた年金保険料を、離婚後に夫婦で分け合う制度です。たとえば、夫が会社員で妻が専業主婦の場合、夫が働いて年金を納められたのは妻の支えがあったからこそ。しかし、離婚をすれば夫のほうが支給される年金額が大きくなり、不公平感が生じます。年金分割制度では、厚生年金の支給額の一部を妻に移すことで、それを解消します。分け合う際の割合は、婚姻時期や期間によって異なるので、注意が必要です」

 

分割方法には、半分ずつ分け合う「3号分割」と、話し合いにより割合を決める「合意分割」の2つがある。前者は’08年4月以降に納めた年金に適用され、後者はそれ以前の年金に適用される。

 

たとえば、’93年に結婚し、’21年に離婚した夫婦の場合、’08年4月以降に納めた13年分の年金は半分ずつ分け合うが、それ以前の15年分の年金の割合は、夫婦合意のもとで決められるのだ。

 

「話し合いをするには納付の詳細を知る必要があるので、まずは、婚姻期間中の納付記録などが記されている『情報通知書』を年金事務所に請求します。疑問点があれば併せて問い合わせましょう」(福田さん)

 

なお、手続きができるのは離婚から2年以内。離婚後はさまざまな手続きで多忙になるが、将来の備えとなる年金分割も忘れずに。

 

「女性自身」2021年3月2日号 掲載

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