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介護のせいで仕事を辞めなくてはならない。自分の時間がない……。そんな苦しい状況は上手に制度を使うと改善されるかもしれませんーー。

 

「親の介護でやっていけないことは2つあり、1つはなんでもお金で解決しようと思わないこと。仕事や家事に追われていると、『手続きが面倒』『急いでいるから』といって、親の病院への支払いや介護費をつい立て替えてしまう人が多いようで、自分たちの生活にしわ寄せがきます。2つは、1人ですべて背負わないこと。介護はプロに任せるのが基本です。介護保険で使えるサービスを知っておくと“もしも”のときにも安心できます」

 

そうアドバイスするのは、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアムシリーズ)の著者で、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。

 

介護が必要になったとき、ほとんどの親は「住み慣れた家で過ごしたい」という希望を持つが、支える家族の負担は増える。介護にかかる費用を抑えながら、家族の負担を少なくするツールを知っておくことが、「楽になる介護」につながるという。

 

「在宅介護を続けていると、一時的に介護が難しくなるときがあります。たとえば、介護者の残業が続くようになった。親戚や親しい友人の冠婚葬祭に出席するために、泊まりがけで出かけなければならない、また、介護疲れをリフレッシュするために旅行に行くということもときには必要でしょう。そんなとき使いたいのがショートステイです。さらに、日常的に介護が楽になるサービスは、あまり知られていませんが、小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護が便利です。自治体にこれらの介護サービスがあるかどうかは、介護保険の小冊子で調べるほかに、介護のよろず相談所の『地域包括支援センター』などで聞いてみましょう」(井戸さん・以下同)

 

骨折など長期入院したときは、病院内の医療ソーシャルワーカーが、退院後の生活について相談してくれることもある。

 

そんな介護サービスを使って“楽”になった実際のケースを井戸さんが解説してくれた。

 

【ケース】80代の母を娘50代(独身)が同居介護

 

独身で会社員のA子さん(53)は母(84)と2人暮らし。あるとき、母は転倒して、大腿骨を骨折してしまい、長期入院することに。すっかり足腰が弱くなったので要介護認定を受けると要介護2。

 

週3回、デイサービス(通所介護)に通い、2日は自宅で過ごしていたが、3度の食事の用意のほかにも、トイレの介助が増えてきたので、A子さんは「私が会社を辞めて面倒を見なければならないのか」と、困っていた。

 

週2日は、ヘルパーに来てもらい、家事支援を中心にサポートしてもらいたかったが、「同居の家族がいる」という理由でホームヘルプサービス(訪問介護)は使えなかった。これ以上、ケアマネジャーに相談してもらちが明かないと思ったA子さんは、思い切って「地域包括支援センター」に連絡をして、相談に乗ってもらうことにした。

 

そこで、担当者から提案されたのは、「小規模多機能型居宅介護」の利用だった。耳慣れない名前だったが、デイサービスを中心に、ホームヘルプ、ショートステイを組み合わせて使える。しかも、利用料は基本定額制なので、金銭的な負担は軽くなるという説明を受けた。「ちょうど1名空きが出た」と言われたので、利用してみることにした。

 

【サービス】「小規模多機能型居宅介護」を使おう

 

「小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)」とは、介護保険制度の地域密着型のサービスで、デイサービスを中心に状況や要望に応じて、ショートステイとホームヘルプを組み合わせたプランを利用することができる。要支援1、2と要介護1〜5の人が利用でき、利用料金は定額制で、自治体によって異なる。別途、食費などがかかる。

 

「A子さんの母は、月曜から金曜まで週5日デイサービスに通うプランを立ててもらい、1カ月の利用料は5万6,836円(1割負担)でした。内訳は基本料金が1万6,836円(要介護2)、昼・夕食代が約3万円、ほかの加算が約1万円で、費用は全額、母の年金の範囲内で間に合ったそうです」

 

平日は7時30分にA子さんが仕事に出かけてすぐに、施設のお迎えの車が来て、母は施設に。施設では、昼食の買い物から調理、後片付けまでみんなで役割分担して行うので、A子さんの母はほかの高齢者に代わってたくさんの役割を担ったそうだ。

 

「この制度のおかげで母が留守番をする時間がなくなりました。仕事で忙しいときは1日4,000円程度かかるショートステイを利用し、仕事との両立ができるようになりました。ただし、利用する際には施設に直接申し込むので、今までケアプランを立ててもらっていた居宅介護支援事業所との契約を打ち切る必要があります」

 

A子さんも、最初は悩んだというが、週5でデイサービスに通えることが決め手となったという。

 

介護はいつ終わるかわからないので、親も介護する家族も“楽”になれるプランを選ぼう!

 

「女性自身」2021年4月20日号 掲載

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