「させていただきます」の氾濫に違和感…美しい敬語は?
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最近、やたらと耳につきませんか?「~させていただきます」の乱用。どう言い換えれば正解なのか、美しい日本語を操る専門家に教えてもらいましたーー。

 

《この度、相葉雅紀は結婚させて頂くことになりました》
《それでも頑張れる場を頂き、そしてお仕事をさせて頂けています》

 

9月28日に結婚を発表した嵐の相葉雅紀(38)。その結婚報告に違和感を持つ人も多いのでは……。

 

「短い文章に『させていただく』という言葉が2回も出ています。過剰なへりくだりですね」

 

こう語るのは『バカ丁寧化する日本語』『失礼な敬語』(ともに光文社新書)の著書がある、日本語・フランス語教師の野口恵子さん。

 

「まもなく総選挙となります。街頭では、候補者の『○○をお訴えさせていただく』という演説も耳にすることでしょう。これは翻訳家の太田直子さんも指摘なさっていた言葉ですが、今の日本では『させていただく』の乱用が目に余ります」

 

世の中は、“ヘリクダリスト”であふれているのだ。

 

「言葉は時代の変化とともに意味や使い方も変わってくるものですから、一概に“間違い”とはいえません。しかし日本語にはほかの言い回しがあるのです。また『させていただきます』の安易な使いすぎは、受け取り手が慇懃無礼に感じたり、不快感を抱くケースもあります」

 

そこで、テレビや日常生活でよく耳にするフレーズを例に、別の表現例を教えてもらった。

 

「まずは『させていただきます』を1日5回までに抑えるように心がけて、より気持ちを伝える言い回しを練習してみましょう」

 

【ケース1】「訴え型」ヘリクダリスト《お訴えさせていただく》

 

政治家の街頭演説で多い表現ですが、不要な敬語を重ねています。すでに「お訴えする」が謙譲の言い方になっているので、これ以上へりくだる必要はありません。「お訴えいたします」で十分でしょう。

 

もし、何かを「強く訴えたい」のであれば、「◯◯をみなさんに訴えたいのです!」とするほうが、力強さが伝わります。

 

【ケース2】「感謝型」ヘリクダリスト《金メダルを取らせていただいた》

 

五輪でよく耳にしたフレーズです。感謝の念を伝えたい思いなのでしょうが、この言い方では極端な話ですが“賄賂を贈って八百長に加担してくれた人へのお礼なのでは”とも受け取れる表現です。

 

あくまでも努力して勝ち取ったのは選手本人です。

 

「金メダルを取ることができました。応援してくださった皆さんのおかげです。ありがとうございました」という表現が好ましいのではないでしょうか。

 

局アナが番組を降板する際に「この番組を担当させていただいたことが、経験になりました」とあいさつしたり、俳優がトーク番組で「舞台に出させていただいたときーー」とエピソードを語るときの言い回しも、同様のことが言えます。

 

【ケース3】「遠慮型」ヘリクダリスト《お先に食べさせていただきます》

 

「ら抜き」言葉が日常的に使われていますが、「さ入れ」言葉も一般化しそうな勢いです。

 

テレビでタレントが「それでは、いただかさせて、いただきます」と「いただく」を2つも入れていたケースには閉口しました。

 

もっとシンプルに「(では、失礼して)お先にいただきます」で十分です。

 

【ケース4】「お願い型」ヘリクダリスト

 

《感染予防のため、車内での会話は、ご遠慮させていただいております》

 

コロナ禍での電車で、このようなアナウンスを耳にしました。この言い回しは明らかに間違いです。

 

「遠慮させてもらう」は、自分が「遠慮する」ときに使う表現です。乗客に向かって「会話しないでほしい」と言いたいときには、使えません。

 

「ご遠慮くださいますようお願いいたします」が丁寧な表現となりますが、守るべきマナーなのだから、もっと毅然と「車内での会話は、ご遠慮ください」がベストな表現ではないでしょうか。

 

【ケース5】「尊敬型」ヘリクダリスト

 

《事務所の〇〇先輩と仲よくさせていただいていて、ご飯にも行かせていただいています》

 

テレビのトークコーナーなどで、タレントがプライベートを語る際によく使用される言い回しです。

 

食事に連れていってくれる先輩に直接、または先輩側の関係者や家族などに向かって言うのなら、特に問題はありません。ただし「いただく」の使いすぎには注意。

 

一方、先輩と関連のない人を相手に、同じ社内や身内の人をやたらと持ち上げる必要はありません。

 

「○○先輩がかわいがってくれて、ご飯にも連れていってくれる」で伝わるし、先輩に対しても礼を失していません。

 

■大事なのは、尊敬や感謝の念を持つこと

 

「対面コミュニケーションでは伝わる情報のうち、言語そのものが占める割合は35%ほどといわれています。つまり『ありがとうございました』『申し訳ございませんでした』と言葉で表現しても、相手の顔を見なかったり、吐き捨てるような言い方では誠意は伝わりません。大事なのは、言葉ばかりでなく、まずは心から尊敬や感謝の念を持つことなんです」

 

あなたも、文脈を無視して、過剰に「させていただく」を使っていないかどうか振り返ってみてほしい。

出典元:

「女性自身」2021年10月19日号

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