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物価が上がっている。総務省が1月21日に発表した’21年12月の生鮮食品を除く消費者物価指数は、前年同月と比べて0.5%アップ。4カ月連続の上昇だ。特にエネルギー関連の価格上昇が大きく、電気代は13.4%アップで、40年9カ月ぶりの上げ幅になった。いっぽう年金は下がっている。そんな物価の上昇や減る年金について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■諸悪の根源は「年金カット法案」

 

’22年度の年金支給額は昨年度から0.4%ダウン。厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で、昨年度から903円減って月21万9,593円。国民年金は満額支給の方で昨年度から259円減って月6万4,816円です。物価上昇中に年金が減るのは、大きな痛手になるでしょう。

 

年金はもともと「物価や賃金が上がれば年金も上がる」ものでした。物価と同じように年金も上がるため、年金で暮らす方の家計が苦しくなることもなかったのです。

 

ですが年金財政のひっ迫で、’04年小泉政権のもと「100年安心」をうたう年金改革を実施。その際「マクロ経済スライド」を導入しました。これは年金保険料を納める現役世代の負担を抑えるため、物価や賃金が上がっても、その上昇率より年金の上昇率を抑えるというものです。たとえば物価が2%アップなら、年金は1.1%アップにするといったイメージです。 ただマクロ経済スライドは物価が上がった年しか発動しないのがルール。’04年以降デフレが続いたため、これまでに’15年、’19年、’20年の3回しか発動されず、年金財政は厳しいままです。

 

そこで’16年、当時「年金カット法案」と揶揄された新ルールが登場。今度は「物価が上がっても賃金が下がっていれば、年金は賃金に合わせて下げる」というもので、’21年から施行されました。

 

そのため’21年度の年金額は、前年度から0.1%ダウン。さらに、コロナ禍で給与カットも多かったため’22年度は0.4%ダウンで、2年連続の年金減額になりました。

 

しかも今は、冒頭で述べたとおり物価が上がっています。この物価上昇はまだまだ続くと見られていて、’22年4月の生鮮食品を除いた物価上昇率は1.7%程度になると予測する専門家もいるほどです。

 

現役世代の給料は一向に上がらないし、年金まで減らされたなかで、物の値段はどんどん上がります。小麦の政府の売り渡し価格が

 

’21年10月に19%上昇した影響がそろそろ見えはじめ、日清製粉ウェルナは2月からパスタなどを3〜9%値上げします。また、食用油も高騰していて、3月にはキユーピーがマヨネーズなどを2〜10%値上げします。コロナ禍で傷んだ家計を値上げが襲う。まさに泣きっ面にハチです。

 

これほど国民が苦しむ物価高の状況で、それでも年金を減らす国からは、「自分の暮らしは自分で守れ」というメッセージしか聞こえてきません。私たちはわが家の家計を守り抜く覚悟をもって、ムダ遣いをなくして、財布のひもをぎゅっと締めていきましょう。

経済ジャーナリスト

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