■「資産を運用する」ほったらかして増やす
「物価高や円安に焦って『投資で短期的に稼ごう』というのはやめましょう。高い確率で失敗します」
山崎さんが提唱するのが、目先の相場の高低に一喜一憂しない“ほったらかし投資”だ。
「原則は『長期・分散・低コスト』です。10年や20年など、長い目で考える。そして、投資先を分散させることでリスクを減らせます。さらに、投資がうまくいったとしても、高い手数料を取られれば、得られるお金は減るので、低コストな商品や証券会社を選びます」
だが、「分散」といっても、世界中の株式市場やさまざまな業界にバランスよく投資するのは、専門知識がないと難しい。
「そこで、おすすめなのが、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)という投資信託です。全世界の株式市場の指数と連動するように運用されている。この商品を購入するだけで、世界中に分散投資をしているのと同じことになるのです。さらに、投資会社の取り分である『運用管理費用』も安く抑えられています」
世界的な株安などの影響を受けて、短期的には価格が下落することもあるが、長期的に見れば価格は上昇してきた。
「購入手数料が安いネット証券で運用するのがおすすめ。証券会社の窓口で購入もできますが、余計な商品を買わされないように気を付けましょう。顧客にいい商品と、証券会社にとっていい商品、つまり手数料をたくさん取れる商品は違うのです。投資するときは、iDeCoやつみたてNISAなど、税の優遇が受けられる制度を目いっぱい活用しましょう」
資産のうち、どれくらいの額を運用するのがいいのだろうか。
月の生活費の3~6カ月分を銀行口座に残し、残りを「運用資金」とするのが基本的な考え方。
「投資信託は『リスク資産』です。年5%ほど増えることが期待される投資の場合、最大4割ほど増える可能性がある一方、投資額の3分の1が減るリスクもある。そうなった場合でも、許容できる金額を投資するのです」
資産が100万円減ることまでは許容できるなら、投資額は300万円になる。老後のための運用なら、こんな考え方もできるという。
「95歳まで長生きしたとして65歳から30年、360カ月です。1万円までなら、ひと月あたり使える額が減っても生活に支障ないという人は、360万円の3倍の1,080万円まで投資していいということになる。5,000円なら、540万円です」
残りは「無リスク資産」として、元本割れのない「個人向け国債」で運用するか、普通預金のまま保有する。ただし、預金額は銀行が破綻した場合でも保護される1行1,000万円の範囲内としよう。
毎月の給与からいくら投資にまわすかというのも、基本的に考え方は同じ。生活費を除いたうえで、許容できるリスクで額が決まる。
「あとは『ほったらかし』ます。大げさに言えば、投資したことも忘れているくらいでいい。老後、必要になったタイミングで取り崩していきましょう」