人生100年時代とはいえ、人はいつかは亡くなるもの。それは自分の両親だって例外ではない。旅立った家族との思い出を大切にしておくためにも、きちんと「家じまい」をしていこう。
そこで、今回は専門家の教えをもとに「後悔しない家じまい」について考えていきたい。あるじを失った実家を放置しておけば、思いもよらない出費がかさむだけでなく、残されたきょうだいの間での不和の原因にもなりかねない。そうした事態を避けるためのヒントはどこにあるのかーー。
■兄弟姉妹の誰がやる?「家じまい」の主体を決めよう!
「ご両親が亡くなるなどして実家が空き家になっている場合、家じまいをするのであれば、家族の誰が主体となって動くのかを初めに決める必要があります。親の名義のままでは不動産を売ることも貸すこともできませんから、できれば家じまいの主体となる人の名義で相続登記をしてください」
こう話すのは、ファイナンシャル・プランナーとして約1000件の家計の相談に応じ、自身も、現在まさに家じまいをしているという北見久美子さん。
「家じまいというのは、締切りがあるわけではないので、延び延びになりがちです。そろそろ整理していかないと、という実感が湧くのは、子どもが自立した60代以降ではないでしょうか」
実際、親が他界しても、「いつかそのうち」と相続登記を怠っている例は多い。揚げ句の果てに相続人が行方不明になり、家が荒れ放題で放置されてしまうようなケースも急増している。そうした事態を受け、’14年には民法が改正。不動産の所有者が死亡した場合、相続人は3年以内に相続登記を完了させるよう定められた。
「わが家は、親の遺言では長男である弟に家を相続させる意向でした。けれど弟は現在、遠方に住み、仕事も子育ても多忙な時期ですから、家じまいは現実的ではありません。ですから、子どもたちも自立して手がかからなくなった私の役目として受け入れています」(北見さん・以下同)
このように、当事者どうしが納得済みであれば、主体は必ずしも実家の相続人でなくてもかまわない。要は、誰が家じまいのリーダーシップを取るのかを決めるのが重要だという。
「大切な形見や貴重品などの行き先は相続人全員であらかじめ決めてしまうこと。任せてもらったあとは、前に進むのみです!」
さらに、家じまいはタダではできない。ある程度の費用がかかることも念頭に入れておかなければならない。
「家の規模や立地にもよりますが、まず初期費用として不動産の相続登記費用がかかります。古い家ですと、敷地の測量をし直す必要がある場合もありますが、その作業も専門家に依頼することになるので、数十万円単位のお金が必要になります」
また、実家を売却するにせよ貸し出すにせよ、家の中の荷物の整理は必須だ。その際の交通費や宿泊費などもばかにならない。
「業者に一任するか、すべてのものに目を通して丁寧に手離していくのかによって費用は変わってきますが、主体となる人は、一時的にある程度の持ち出しがあることを覚悟しておく必要があります」
気持ちだけでは家じまいの主体は務まらない、と心得ておこう。