コロナ禍葬儀に参列できず“死を受けいれられない人”が急増中「弔い直し」で心の整理を
画像を見る 友人たちと故人の思い出を語ることも心の整理に(写真:PIXTA)

 

■死を実感できないと悲しみが続いてしまう

 

「お葬式は、残された人が故人の死を受け入れて、心を整理し通常の生活に戻っていくきっかけになるものです。しかし、コロナ禍で、葬儀自体ができなかったり、十分な葬儀ができなかったと感じている家族や、葬儀に参列できなかった人は、その人が亡くなったことを実感するのが難しくなります。そうなるといつまでも落ち込んでしまったり、元の生活に戻ることが難しくなったりするのです」(井上さん・以下同)

 

最近では、こうした“あいまいな死”を乗り越えるため、葬儀や供養をやり直す“弔い直し”のニーズが高まっているという。

 

「私の恩師が亡くなった際にも、家族葬でその死を周囲に伝えていなかったことがあります。後から死を知った私は、ショックと喪失感に襲われましたが、自分なりの“弔い直し”をして死を受け入れたんです」

 

井上さんが友人でもできる弔い直しの方法を教えてくれた。

 

(1)友人用の祭壇をつくって思いをはせる
(2)お墓参りをする
(3)昔の友人たちとお別れ会を開く

 

「宗教的な儀式を行うことだけでなく、その人を思うことそれ自体が、弔いになります。そのうえで、自分がその故人を思っていることを自覚することが、喪失感から立ち直るためには欠かせません。何かしら拝む対象を作ることで、そのことを自覚しやすくなります。故人の思い出の品や写真などを飾ったり、そういうものがない場合は、メールを印刷したものなどでも構いません」

 

また、親族にお墓の場所を聞いて、お参りをするのもよいという。

 

「お墓参りをすることでも、死を実感しやすくなります。ご親族に『墓前にお参りしたい』と、お墓の場所を聞いて伺いましょう。さらに、お別れの会を開いて友人たちと故人の思い出話をすることも、死を受け入れることにつながります。“今も、皆の心の中にいるんだ”と感じることや、お互いの喪失感を共有することが、悲しみを和らげてくれるんです」

 

このような行動を起こすことそれ自体も、死を受け入れることにつながっていくという。

 

「死は、家族だけのものではありません。人は社会的な存在なのだから、友人や知人も落ち込んで当然。私は、葬儀の相談を受けるたびに『家族葬にされても、故人が亡くなったことは、周りにお知らせしてください』と伝えています。死者を弔うことは、残されたものが、前向きに生きていくためにも必要なのです」

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