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物価高騰の影響で支出額が急増している。総務省の「家計調査」の〈夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の世帯(無職世帯)の家計の収支〉によると、2022年の上半期(1〜6月)の非消費支出をふくめた月の総支出は平均26万8643円。

 

一方、年金受給額(社会保障給付)は平均21万8337円だから、年金だけだと毎月5万306円、年間だと60万円以上の赤字が出る計算に。老後資金を守るために私たちはどうすればいいのか。専門家に聞いた。

 

【1】65歳以降も働き続ける

 

「年金の不足分を補うために、もっとも有効な手段が『働くこと』です」と語るのはキャリアアドバイザーの上田信一郎さんだ。

 

「65歳以降も働くことで、生活をグッと楽にすることができます。といっても、現役世代のようにフルタイムで働く必要はありません。たとえば週3日、1日7時間のパートでも十分です。最低賃金(全国平均は961円)で働いたとしても月8万円ほどになる。週に3日程度ならば、体力の負担も少なく、年金の不足分を十分に補えます」

 

すでに“老後”を迎えている人は、高齢者への仕事をあっせんしているシルバー人材センターを各自治体が運営しているので、相談してみるといい。これから老後を迎える人は、先を見据えた行動をしたほうがいいという。

 

「50代で今までやったことがない画像編集ソフト『フォトショップ』のスキルを身につけ、企業からネットショップの商品写真の加工を受注して稼いでいる人もいます。また50代後半で表計算ソフトを学びはじめ、70歳を過ぎても仕事を続けている人もいます。50代から目標を明確にして、早めに対策した人は、老後生活でもお金に困らないことが多いようです」(上田さん)

 

【2】投資でお金を増やす

 

日本の年金制度には、1階建ての基礎年金に上乗せした2階部分の厚生年金があるが、その上の3階部分である「私的年金」を充実させることも有効な防衛手段だ。

 

「自分で決めた掛金を積み立てて運用し、60歳以降に受け取る個人型確定拠出年金のiDeCoは掛金の全額が所得控除の対象で、運用益が非課税、受け取り時に税制優遇があるなどのメリットがあります。2022年5月からは、加入できる年齢が『60歳未満』から『65歳未満』へと引き上げられ、積立期間が延びました」(増田さん)

 

さらに投資の収益が非課税になる「つみたてNISA」を検討するのも手だ。

 

「投資の運用益には約20%の所得税がかかりますが、つみたてNISAは毎年40万円まで積み立てられ、20年にわたり非課税になります。たとえば50歳から、毎月3万円積み立て、年平均3%で15年間運用できた場合、積立金540万円に運用益約141万円が加算された約681万円が老後資金として、残るのです」(増田さん)

 

【3】年金を繰り下げ受給する

 

働き続けることや、投資による老後資金の増加で、65歳時点で年金に頼らなくても生活できる人にぜひやってほしいのが、年金の繰り下げ受給だ。

 

「これまで繰り下げられる年齢は70歳が上限でしたが、今年4月からは75歳まで繰り下げが可能になりました。受給開始を1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%増えるため、75歳まで繰り下げれば、受け取る年金額も1.84倍、つまり2倍近くも増額します」(増田さん)

 

じつは夫婦で片方だけの年金を繰り下げたり、厚生年金と基礎年金を両方もらっている場合はどちらか片方だけを繰り下げたりすることができる。また、生活が厳しくなったら、すぐ受給も開始できる。増えた年金額を一生涯もらうことができるが、早くに亡くなってしまうと、トータルでもらう金額は少なくなってしまう。

 

「男女で平均寿命に5歳ほどの差があることや、夫の死後に10年以上ひとり暮らしをする女性も多いことから、夫が元気なうちは夫の年金で生活し、妻は75歳まで繰り下げてもいいでしょう」(増田さん)

 

元サラリーマンの夫と専業主婦の夫婦の平均的な受給額である月22万円で計算すると、夫が70歳、妻が75歳まで繰り下げた場合、年金額は75歳時点で月に10万円以上も増えることになる。それまで、働きながら老後資金を守ることができていれば、老後のお金の不安は大きく解消されるだろう。

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