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働くことが当たり前になった日本の高齢者。その一方、シニア労働者のトラブルも増加しており、なかには、命に関わるものも。働くうえで身を守る方法を専門家に聞いた。

 

高齢化が進む日本社会。先月、総務省は、全国民の29.1%が65歳以上の高齢者で、そのうち909万人が働いていると発表した。特に65~69歳では、50.3%がなんらかの仕事に就いており、2人に1人が働くかたちとなっている。

 

「残念ながら、働く高齢者が増えるにつれてシニア労働者のトラブルも増加しているんです」

 

そう語るのは、日本初の働く高齢者向けの電話相談会「高齢者の労働110番」の実行委員で、労災問題に詳しい尾林芳匡弁護士だ。

 

多く寄せられるトラブルとしては、残業代や交通費が支払われない、夜勤の長時間勤務をやめたい、社会保険に入れると言われたのに入れない、などがあるという。

 

さらに、今特に問題視されているのが“高齢者の労災”だ。

 

「“けがが多いのに業務委託のため労災申請できない”“腰痛なのに重労働をさせられている”“半年で肩を痛めた”など、労災に関する相談は先日の電話相談会でも多く寄せられました」

 

厚生労働省が発表している「労働災害発生状況」によると60歳以上の労災死傷者数は年々増加傾向に。’21年には60歳以上の高齢者が死傷者数に占める割合は25.7%と、全世代のなかで最も高くなっている。

 

さらに死亡者についても、’21年に労災で亡くなった高齢者は360人と、労災死亡者全体の43.3%を占めているのだ。

 

「60代以上の労働者の多くは、非正規雇用。働くうえでさまざまな問題や悩みを抱えても“辞めさせられるかも”と、職場に強く言えない人が多いのです。

 

過去には、70歳の男性が真夏の陸上競技場の整備作業中に熱中症で倒れ、亡くなってしまうという事件もありました。若い人なら問題なくできる仕事も、高齢者にとっては過酷な場合があるんです」

 

さらに、高齢者の場合“過重労働”も大きな問題のひとつだ。

 

「ガソリンスタンドに勤務していた73歳の男性は、会社と労働時間は週30時間未満、勤務日も週2~3日という契約を結びましたが、実際はそれを超える労働を強いられていたんです。そして『連続勤務してしまい、暑さのため体調が悪く本日の勤務は休みたいのですけど?』とスマホで送信しようとしているときに、心筋梗塞を発症して亡くなってしまいました」

 

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