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2月24日、岸田文雄首相は大手電力会社から申請されている4月以降の電気料金の値上げについて「厳格かつ丁寧な審査を行ってほしい」と待ったをかけ、電気料金の抑制に向けた支援を取りまとめるように担当大臣に指示した。

 

しかし、岸田首相の対応は遅きに失したようだ。総務省が2月7日に発表した「家計調査」によると、全国の都道府県庁所在地における2人以上の世帯で、2022年の1年間に支払った電気料金がもっとも多かったのが富山市で20万9千9円だった。エネルギー価格の高騰を受け、2021年から3万4千232円も増えた。

 

「ここまで高いとは……」と話すのは富山市出身でファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんだ。

 

「たしかに富山の家は広いんです。私の実家も建坪が100坪ほどで部屋数も多く、友人もみんな持ち家ばかりで大きい一戸建てが多かった。しかも三世帯同居率が高く、1世帯あたりの人数も全国トップクラスです。とくに今は家族みんながスマホを持っていて、テレビも複数台あります。広い家でたくさんの家族が、あちこちの部屋でこたつやエアコンを使ってテレビを見たり、スマホをいじっていたら、その分、電気代が跳ね上がってしまうかもしれませんね」

 

総務省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によると、富山県は1住宅あたりの居住室数(持ち家)で7.02室(全国平均5.49室)、1住宅あたり延べ面積(持ち家)でも170.79平方m(全国平均119.07平方m)と全国1位だ。さらに今回発表された家計調査によると世帯人員数でも富山市は3.02人と全国的にも多い。

 

前出の統計で電気代の多かった都道府県庁所在地の上位3位は、冬の寒さが厳しい富山市、福井市、金沢市と北陸3県が並んだ。しかし、一方でより寒さの厳しい札幌市は21位になっている。節約アドバイザーの丸山晴美さんが解説する。

 

「北国の住宅は、暖めた空気を外に逃がさない暖房効率が高い家が多い。また暖房器具もエアコンでは暖かさを感じにくく、灯油ストーブなどの直接暖房が中心。また北海道ではまきストーブやペレットストーブなどで光熱費を抑える工夫をしている家も多いのです」

 

北陸3県の電気料金について北陸経済研究所の藤沢和弘さんに聞いてみた。

 

「たしかに北海道ほどではありませんが北陸3県の冬も相当冷えます。しかし断熱効果の悪い古い家が多く、ほとんどの家が底冷えするため、灯油ストーブに加え、こたつを使っています。さらに北陸の夏は高温多湿でジメジメして暑いのが特徴。エアコンを各部屋に設置して、一年中使っている家も少なくありません。また富山市、福井市、金沢市は、日本でも有数の夏の降水量が多い地域。日照時間も短いため乾燥機や除湿機を使う家庭が多いことも電気代を押し上げている可能性があります」

 

北陸電力の施策で、家をリフォームした際にオール電化に変えた世帯が多いことも電気代の高騰を招いた一因かもしれないという。

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