精神科医・和田秀樹さんが指南! 50代から「幸齢者」を目指す賢い老い方
画像を見る 50代から始めるといい「チャレンジ」する習慣とは?(写真:PIXTA)

 

【1】お金のマインドリセット

 

「まず、“お金は貯めるものではなく、使ってこそ幸せになる”という考え方に変えましょう。動ける間に、自分の趣味や好きなものにお金を使っておかないと、いつ使えなくなるかわかりません。ある日突然転んで足を骨折し、歩行困難になる。あるいは、脳梗塞を起こし、その後認知症になることもありえます。“元気なときに海外旅行に行っておくべきだった” “大好きなファッションにもっとお金を使っておけばよかった”と、死ぬ間際に後悔しないためにも、自分のためのお金は使うべきなのです」

 

年金を利用しながら、生活に必要なお金は残しつつ、自分の心が満たされるお金の使い方をする。これが “幸齢者”として楽しく過ごすための基本ポイントだ。

 

【2】食事のマインドリセット

 

「血圧やコレステロール値が高いから、塩分や脂肪分が多いおいしい料理は食べないで我慢しているという高齢者はたくさんいます。でも、好きなものは食べていいのです。自分の欲を制限することは、かえって大きなストレスとなります。ストレスを抱えると免疫力が低下するので、むしろ病気になりやすくなる。できるだけストレスのない生活を実践し、免疫力を高めることのほうが大事だというのが私の考え方です」

 

和田さんによると、血圧やコレステロール値が極端に高い場合は問題だが、基準値よりも少しオーバーしている程度なら、気にする必要はないそうだ。

 

【3】病気のマインドリセット

 

「長年、老年医療に携わっていると、高齢者の方々は“医者に嫌われてはいけない”という発想をお持ちの方が非常に多く、それがストレスになっているケースも。たとえば、処方された薬が自分の体に合わないのに、嫌われたくないから我慢して言わない。あるいは、治療方針に疑問があるのに、そのまま聞き入れてしまう……。そういう意識は、『マインドリセット』すべきです」

 

医者には言いたいことをハッキリと伝える。信頼できる医者であれば、患者の話をしっかり聞いて対応するはず。そうでない医者の場合は、すぐにクリニックを変えるという発想に切り替えるのだ。

 

■50代から始めるといい「チャレンジ」する習慣

 

このように、70代以降もストレスをためず、充実した老後を送るために、50代から始めておくといいことがあるそうだ。それは新しいことにチャレンジする習慣を身につけておくこと。

 

「人間の脳の中にある前頭葉は、50代、60代になるにつれて衰えていきます。前頭葉が劣化すると意欲が低下し、物事への関心が薄れていく。そして思考の切り替えも悪くなるので、新しい発想や創造性がなくなっていきます。しかし、50代から日常的に前頭葉を刺激することで、70代、80代になっても老化を遅らせることができる。最も効果的なのが、ジャンルを問わず、いつもと違うことに挑戦すること。毎日が実験だと思ってトライする習慣を身につけておけば、前頭葉の機能を高めることができるのです」

 

たとえば、ランチは決まった店にばかり行くのではなく、ときどき初めての店にトライしてみる。おいしくないかもしれないが、未知の領域に足を踏み入れることで、前頭葉が刺激されるという。

 

「老化を遅らせることができれば、70代以降も継続して、自分でやりたいことを長く続けられます」

 

50代、60代のうちから、70代以降は“老いを受け入れ、我慢せずに好きなことをやる”。そして“年を取ると楽しいことが待っている”と楽しみにするーー。

 

今から“幸齢者”の意識を持っておくことも、賢い老後の生き方かもしれない。

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