“実家なんて古くてボロボロだから価値がない”。“年老いた親が亡くなったら、解体して売却するつもり”―――。そう考えている人は、今回、年末年始に帰省した時に、ぜひチェックしたほうがいいことがある。これまで気にも留めていなかった実家の特徴が、ひょっとすると不動産市場で“ダイヤモンドの原石”に化ける可能性があるからだ。
「家を売却する際、通常100平方メートル程度の戸建てであれば解体費用が200万円は下りません。しかし、その住宅自体に価値がある「原石住宅」だった場合は解体不要。しかも土地のみの売却価格よりも建物の価値がプラスになります。売る前に、まずは実家に価値があるかどうかをチェックしてみるべきです」
こう語るのは、年間に4~5件の「原石住宅」を売買している、さくら事務所グループ『らくだ不動産』の不動産エージェント・山本直彌さん。
「原石住宅」とは、“現時点で価値のある住宅”と“将来的な価値のある住宅”の2つを総した言葉。本当はどちらも価値があるのだが、一般的な不動産売買では評価されにくく、これまでは建物を解体し、更地にしてから売買されることが多かった。ところが最近では、売主にとってはただの古い家だと思っていても、特定の買主にとってはダイヤモンドのように希少性の高い人気物件として、購入されるケースが増えてきているのだ。
では、どんな住宅(庭含む)が希少性の高い「原石住宅」になるのか。山本さんに7つのポイントを挙げてもらった。
【1】敷地内に伝統的な蔵や池。居間に欄間がある
「古き良き日本家屋を思わせる要素は、高級感と同時に今の住宅にはない新しさを感じさせるので、海外の人や若い世代に人気が高いです」(山本さん、以下同)。
【2】庭に大きく育った桜の木がある
「居住者がそこまで重要視していなくても、市場ではピンポイントなニーズがあります」
【3】大きな屋根裏部屋、地下室、屋上テラスがある
「物置にできるというメリットのほか、まるで秘密基地が家にあるかのような少年ごころをくすぐるポイントとして、小さな子どもがいる買主から喜ばれます」
【4】猫窓のある中古物件や、一階に道場がある
「かなりレアケースですが、実際に「猫窓がある」ということが決め手となり、成約になった事例もあります。さらに道場ぐらいの大きさがある広いリビングなども、買主が自由にリフォームできるので「原石住宅」になりやすいです」
そして、現段階で価値は高くなくとも、建てられた年代や広さ。あるいは、リフォーム履歴や現在の住宅のコンディションなどを明らかにすることで“お宝”になる可能性があるのが、“将来的な価値のある住宅”だ。
【5】1970年~1980年代に建てられた戸建て
「この年代に建築された戸建ては、シンプルでリフォームがしやすい間取りで設計されていることが多く、リフォーム提案がしやすい。売却の際のアピールポイントになります」
【6】建物面積が150~200平方メートル程度ある広い住宅
「広い住宅は市場での希少性が高い。インバウンド需要が活況なことを背景に、民泊を経営したい層から高い需要があります。加えて、敷地の広い住宅は二世帯住宅へのリフォームの可能性も持っているので、そのような希望を持たれる方へのアプローチもできます」
【7】コンディションが良好な住宅
「築年数が古くても、耐震補強や定期的にメンテナンスを重ね、良好なコンディションを保っている住宅はポイントが高いです。修繕した当時のメンテナンス履歴などが残っているとさらにいいです。今後の大規模な修理が不要のため、買主の出費も少なく、とても魅力的な物件として人気です」
山本さんが実際に売買した「原石住宅」の中には、他社が解体後に更地で売却する査定価格よりも600万円も高値で売却できた事例もあったという。
「関東圏内で土地が200平方メートル、築30年の木造2階建て。地下室があり、屋上には海が一望できる広いテラス。そして居間には薪ストーブがある物件です。当初は解体後に更地にして1億円で売る予定でしたが、私どもが『原石住宅』として売却活動をし始めたところ、1億400万円で売れました。これに解体費の約200万円が浮いたので、結果的に売主さんは600万円のプラスとなりました」
最近は、古い日本家屋をそのまま購入して、DIYでカフェを兼用した住宅にする買主もいるという。
全国で増え続ける空き家の中には、磨けば光る物も多いという。今回の帰省で、自分の実家が「原石住宅」かもしれないと思ったら、古民家などを扱う専門の不動産業者や、リフォームをして家を売買している専門業者に相談してみる価値はあるかも!