もちろん交渉の際、家賃値上げの正当な根拠を示してもらうことも重要だ。
「実際に固定資産税がいくら上がるのかも知る必要があります。
また家賃値上げの根拠となる近隣賃料との比較に関しても、オーナーサイドは都合のよい数字を出してくる場合があるので要注意です。
セカンドオピニオンとして、近隣の不動産会社に家賃相場を聞くことも求められます。
インターネット上の不動産ポータルサイトなどで、家賃相場を調べることもできますが、あくまで募集段階での賃料であって、成約した賃料とは限りません。実際にはもっと安い賃料で成約している可能性もあるので、不動産会社に確認をすることも大事です」
こうした根拠がしっかりとあり、家賃値上げも仕方ないと納得できた場合は、値上げに応じるか、退去することになる。
「その際、賃料の値上げ幅を小さくしてほしいと交渉することも大事です。さらに更新料を無料にしてもらうなどの条件で、その後の家賃値上げに応じるケースもあります」
■簡単にサインをしないで“交渉”することが大切
実際に、家賃交渉に成功したというのは、都内人気地区に住む50代男性だ。
「以前、1万円の家賃値上げを打診されたとき、交渉したら5千円を提示され、さらに3千円にまで値上げ幅を減らすことに成功。
そして今年の更新時には、2回目の家賃値上げを提案されました。20万円の物件に対して1万円上げてほしいと言われましたが、さすがに応じられません。
私が退去して1カ月空室になると、オーナーにとっては大損害となるためでしょう、交渉の末、今回の値上げは見送ることで、契約更新することができました」
また、家賃の値上げに応じられずに退去する場合も、引っ越し費用を出してもらう、鍵の交換費用や原状回復の費用をオーナー負担にしてもらうなど、交渉が可能だ。
「住んでいる部屋の原状回復に関しては、非常にトラブルが多い。とくにクロスの黄ばみ、フローリングのキズなどの修繕を理由に高額請求され、敷金がほとんど戻ってこないケースもあります。
しかし、クロスなどは一般的に6年で減価償却されますし、経年劣化に関しては基本オーナー負担です。
退去の際、賃貸管理会社や補修会社と一緒に立ち会いをしますが、ここでも簡単にサインをして合意をする人が多いのが現状。“これも自分たちの負担なのか?”と疑問に思う部分があれば、サインせずに、一度、持ち帰ることも大事です」(山本さん)
自分の住まいは、自分で守っていくことが必要なのだ。