■ケース(3)遺品でないものを勝手に運び出されて……
2カ月前に作業員3人に作業してもらったというのは、50代男性のCさん。自分も立ち会い、2トントラック3往復分の遺品を運び出してもらったが、翌日ラジカセがないことに気がついたという。その後もDVDプレーヤー、ゲーム機、布団、辞書がないことがわかった。
なんとこれらは自分のもの。遺品と分けていたにもかかわらず、誤って別の作業員が運び出してしまったのだ。思い返せば、作業も遺品を乱暴に扱うなど雑であったという……。
「いい加減さや雑さを感じる対応はダメ。故人の持ち物をゴミのように扱う業者もNG。処分する遺品も、ゴミではありません」
悪質な業者は「この部屋には立ち入らないで」と伝えた部屋に入り込んで、現金を持ち去ることもあるそう。立ち会い時の指示出しを徹底するとともに、見積もり時には「○○は大切だからていねいに扱ってくれるか」と聞くといい。軽く受け流すような態度の業者は契約を見送ろう。
そして“持ち去り”でさらに厄介なのは「表面化しづらいトラブルだ」と上東さんは言う。
「実家を離れて10年以上たつと、親が何を持っているかわからない人が多いでしょう。遺品整理をしていると、貴金属や金券、記念切手やコインなど換金価値のあるものが出てきます。依頼者に気づかれないところで、これらを勝手に持ち去る業者が意外と多いのです」
だが、故人の持ち物がわからない以上、被害額も不明で訴えようがないケースも多い。
「本来遺品整理は、依頼を受けた自宅の権利書やマイナンバーカードなどの重要書類や思い出の品などを探し出し、依頼人が知らないかもしれない貴金属や金券など換金価値のあるものも取り分けて依頼人に渡します。こうした選別のために時間と手間がかかり、料金もかさみます。 逆に言えば、大事なものは親族ですべてチェックし、あとは全部捨ててもいい状態にしておけば、遺品整理業者は不要。『不用品回収業者』に依頼すれば、料金も相当割安になるはずです」
遺品整理の費用は相場がわかりづらいが、戸建て住宅にモノが大量にある場合、100万円ほどかかることもよくあるそう。高額請求=悪徳業者だとは一概にいえないのだ。良心的な業者を選ぶには何を基準にすればいいのだろう。
「見積もりが明確で、原則追加料金が発生しないこと。キャンセル料などもはっきり伝える業者であることが基本でしょう」
キャンセル料にまつわるトラブルも多い。遺品整理を37万円で契約した後、もっと安い業者が見つかったため解約を申し出ると、17万円ものキャンセル料が要求された……などの事例もある。
「キャンセル料については、契約の前に確認しましょう。“作業の〇日前なら〇%”などとキャンセルポリシーが決まっているはずです。事前に質問し、見積書などに書き込んでもらうといいでしょう」
先述のとおり“トラック〇台分”といった見積もりもNGだ。追加料金やキャンセル料についても、併せてチェックしよう。
ほかにも、長く続く実績のある業者を選ぶのもポイントだ。
「通常は見積額以上に請求することはありません。見積もりは経験によって正確性が増すものです。経験が少ないと、あやふやでトラブルに発展することも」
そして、遺品整理の作業は依頼人が立ち会うのが基本。最初だけ立ち会って、業者が信用できると思ったらあとはお任せでもよいが、その判断は依頼人が行う。業者のほうから「依頼人の不在中にやっておくので」と言うのは怪しい。
「もっと怪しいのは『なんでもできます』と断らない業者です」
評判のよい業者は仕事予定が詰まっていることが多い。時間的に切迫した依頼や、無茶な値切りなどには「NO」と言うだろう。
また、遺品整理の依頼人は、親しい人を亡くした喪失感を味わい、通常の精神状態ではない人も多いことを忘れてはいけない。
「依頼人の精神状態に寄り添うことも遺品整理業者の大切な役割です。整理を急ぎすぎず、依頼人のペースに合わせることが肝心です」
とはいえ、寄り添いすぎるのは別の意味で怪しい。
「遺品整理業者は仏壇や位牌などのしまい方をアドバイスすることもあります。ただ依頼人を気遣う素振りで過度に寄り添い、もうけようとする業者はダメでしょう」
だが、実際はネット検索して業者を探すしかないのでは?
「ホームページやチラシは業者が書きたいことを書いているので、あてになりません。業者選びは、遺品整理を利用したことのある知人に、よかった業者を紹介してもらうのがもっとも安心です」
知り合いがいなければ、自治体に聞くのも一案だろう。
業者とのトラブルを避けるためには、生前の準備と業者の見極めが必要だ。この機会に、今一度家族で方針を話し合ってみてはいかがだろうか。