■一度でも目撃例があれば遭遇に備えた準備を
では、どのような点に注意してお彼岸の墓参りに行けばよいのか。
「まず、クマと遭遇しないようにすることが第一です。自治体の多くは、ホームページでクマの出没情報を公開していますので、事前にお墓のある市町村のホームページをチェックしてみましょう。あるいは、役場やお寺に電話をして、直接確認してもいいでしょう。先祖代々のお墓が集落の裏山にあって管理者がいない、という場合は、地区の自治会長に連絡をとりましょう」(山﨑さん、以下同)
直近で目撃されていなくても、過去に出没したことがあれば、「クマがいる」と、想定して準備する必要がある。
「クマが人を襲うのは、基本的に人が怖いからです。そこに人がいる、とわかればクマも近づいてきません。ですから、〈ここに人がいるよ〉とクマに知らせるために、クマよけの鈴やホイッスルを持参して、鳴らしながら歩きましょう。ない場合は、大きく手を叩く、声を出すだけでもクマよけになります」
また、墓参りの時間や、人数も考慮したい。
「クマは、早朝と日没後に行動が活発になるため、墓参りは日中に。1人ではなく複数人で行くことをおすすめします。1人より2人、2人より3人で行動するほうが、クマに襲われる確率は格段に下がっていきます」
お墓に向かう道中は、周囲の様子にも気を配ろう。
「墓地周辺の木々にクマのツメ跡らしきものが付いていたり、糞が落ちているなどの場合は、決して近づかないことです」
十分に注意していても、出くわしてしまう可能性もゼロではない。
「もし、クマに遭遇してしまったら、複数人でいる場合は、バラバラにならずまとまって行動することが大切です。クマに背を向けて逃げ出すと追いかけてくるので、クマの方を向いたまま後ずさりするように、落ち着いてゆっくり距離をとります」
このとき、クマが威嚇のために、人に向かって走ってくることもあるという。
「この威嚇行動を“ブラフチャージ”と呼びますが、クマは人を驚かせるためにやっているだけなので、実際に襲いかかってくることは、まずないと考えていいでしょう。ほとんどの場合、人の目前まで来てUターンしたり、左右に散ったりしますので、慌ててクマに背を向けて逃げないこと。これをやってしまうと、クマに襲うきっかけを与えてしまいます」
万が一、クマが目前まで迫っても止まる気配がなかったり、突然、クマと至近距離で遭遇し、いきなり襲いかかられそうになった場合は、どうしたらよいのか。
「“急所”を守りつつ“伏せ”の姿勢をとることです。具体的には、頭部を保護するように頭の後ろで腕を組み、地面に伏せます。このときに、ヘルメットを着用していたり、リュックを背負っていたりすると、頭や背中をクマに引っかかれたとしても、致命傷に至らずにすむ可能性が高まります」
墓参りの際には、万が一に備えて、ヘルメットやリュックなども用意しておくとよさそうだ。伸縮性があり、動きやすい服装を選ぶことも重要だろう。
そして最後に、「あとから来る人の命を守るためにも、お供えものは持ち帰ること」と、山﨑さん。
「クマの嗅覚は犬の数倍優れているので、お供えものを放置しておくと、嗅ぎつけてやってきます。缶ジュースなども歯でかみちぎって飲みますので、放置しないようにしましょう」
人とクマの共存のためにも、こうした心得を頭に入れたうえで、お彼岸の墓参りに向かおう。
画像ページ >【イラスト解説あり】万全のクマ対策「万が一、クマに攻撃されたら」(他1枚)
