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(写真・神奈川新聞社)

 

46人が殺傷された相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」の建て替え方針をめぐり、黒岩祐治知事は25日の定例会見で「施設は本来どうあるべきかを冷静に考え直すところに来ている。もう一回しっかりと議論し、みなさんが納得できる形で着地点を探していきたい」と述べ、再生構想案を再検討する考えを示した。入所者の意向確認を行う意向も表明し、今年3月の再生基本構想の策定期限を延期する可能性が出てきた。

 

県は昨年9月、入所者の家族会と施設を運営するかながわ共同会の要望を踏まえ、現在地で全面的に建て替える方針を打ち出した。だが、今月10日の公聴会では「障害者の暮らしの場を施設から地域へ」という理念や実践してきた経験に基づき、専門家や障害者団体から「時代錯誤」「拙速だ」といった異論が相次いだ。

 

■反対意見に耳を傾ける姿勢も

 

会見で知事は、事件から半年間を「早くしないといけないという気持ちで動いた」と振り返る一方、「(公聴会などで)根本的な問題を投げかけられた。(現状の方針と)どう折り合いを付けていくか。それも含めて議論していきたい」と、反対意見に耳を傾ける姿勢を示した。

 

同じく公聴会で要望が多かった入所者本人の意向確認は「専門家の意見も聞きながら、伺っていく方向で検討していきたい」と述べ、年度内にも着手する考えを示した。

 

ただ、「建て替え方針を見直すか」という質問には「今の段階ではそこまでは言えない」と答え、意見集約の手法についても「検討している」と述べるにとどめた。

 

県はこれまで、3月末までに基本構想を策定、来年度当初予算に基本設計費を計上する見通しを示していた。今後は「入所施設のあり方」「県立施設の役割」といった根本的な議論にも踏み込むとみられ、スケジュール通りに進められるかどうかは微妙だ。

 

■「建て替えしかない」家族会会長

 

黒岩祐治知事が再生構想を再検討する意向を表明したことについて、津久井やまゆり園の家族会「みどり会」の大月和真会長(67)は「現実として建て替えしかないと思っている」と語り、現行方針を支持する考えを示した。25日、神奈川新聞社の取材に答えた。

 

家族会が実施したアンケートでは、約9割の入所者家族が建て替えを希望した。この点を踏まえ、大月会長は「私たちは決意を持って(建て替えを)お願いした。ぜひその方向で進めてほしい」と話した。

 

一方で大月会長は、10日の公聴会で大規模施設を再建することへの批判が相次いだことを念頭に、「この間の流れを見ると、知事のそういう発言もやむを得ない」と一定の理解を示し「知事が迷っているとしたら、もう一度(現行方針通りに)見直してもらいたい」と語った。

 

■相模原障害者施設殺傷事件

 

2016年7月26日未明、相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者が次々と刃物で刺され、19人が死亡、職員3人を含む27人が負傷した。県警は殺人や殺人未遂容疑などで元職員の男(27)を逮捕。横浜地検は事件当時の精神状態を調べるため、2月20日まで鑑定留置を実施している。同容疑者は「全員殺すつもりでやった」「自分は救世主」などと供述し、殺害を正当化する考えを繰り返している。県警は犠牲者19人について「遺族のプライバシー保護の必要性が極めて高く、遺族からも強い要望があった」などとして氏名を明らかにしていない。

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