(写真・神奈川新聞社)
「同級生との間の金銭授受をいじめと認めてほしい」という男子生徒(13)の訴えに市教育委員会がようやく耳を傾けた。東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した生徒のいじめ問題。時間がかかった理由について、岡田優子教育長は「(金銭授受部分をいじめと認めていない)第三者委員会の結論と、事実確認にとらわれ過ぎた」と対応の遅れを認め、謝罪した。
市教委によると、金銭授受部分の受け止め方について再検討を本格化させたのは、1月10日に提出された生徒側の意見書がきっかけだった。市教委の第三者委が昨年11月にまとめた報告書が金銭授受をいじめと認定しなかったことに対し、認定するよう要望する内容だった。
しかし1月20日の市会常任委員会で、金銭授受については事実確認が不十分で、第三者委が認めていないことを基に、岡田教育長が「いじめと認定するのは難しい」と発言したことが大きな批判を呼ぶ。同日以降に市教委に400件近い電話が殺到。大半が教育長や市教委の対応を批判するものだった。
常任委後、弁護士に相談して第三者委報告書との整合性を図ったほか、代理人や保護者を通じて生徒の気持ちを改めて確認。「金銭授受の部分もいじめの一部として認識し、再発防止に取り組む」とする方針転換に至った。やりとりされた金額については、被害、加害側で主張が大きく食い違うが、岡田教育長は「金額の多寡にかかわらず教育的指導すべき内容だった」とした。
いじめ防止対策推進法第2条ではいじめの定義を「対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」などと広く捉えている。岡田教育長は「法の趣旨にのっとって訴えがあったらいじめと捉え、早い段階で察知したい」などと述べた。一連の対応については、14日以降の市会で議論される。
【金銭授受を巡る動き】
2016年11月
市教育委員会の第三者委員会が「おごりおごられ行為そのものについては『いじめ』と認定することはできないが、おごりの要因に『いじめ』が存在したことは認められる」などとする報告書を答申。
2017年1月10日
生徒の代理人が第三者委報告書に対する意見書を提出し、金銭授受についていじめと認定するよう要望。
1月20日
市会常任委員会で岡田優子教育長が金銭授受について「いじめと認定するのは難しい」と発言。
1月23日
生徒の代理人弁護士が市教委に教育長発言撤回を求める申し入れ書を提出。
1月25日
林文子市長が教育長発言について「(被害生徒らに)寄り添っていない発言で申し訳ない」と謝罪。
2月3日
市教委定例会で岡田教育長が金銭授受に関する発言について「反省している」と述べる。
2月13日
岡田教育長が金銭授受をいじめと認める。
■震災避難生徒いじめ問題
東京電力福島第1原発事故で2011年8月に福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒(13)が不登校になり、いじめ防止対策推進法に基づく調査の結果、市教育委員会の第三者委員会が昨年11月、避難直後から小学校で名前に「菌」を付けて呼ばれるなどのいじめがあったと認定する報告書をまとめた。第三者委は、学校や市教委の対応を「教育の放棄」などと批判。男子生徒は「しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」とつづった手記を公表した。