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(写真・神奈川新聞)

 

横須賀の老舗和菓子店「いづみや」の3代目店主で、“菓道家(かどうか)”として世界的に活躍する三堀純一さん(43)が初の写真集を出版した。タイトルは「KADO-New Art of Wagashi-」(カドウ・ニューアート・オブ・ワガシ)。最も得意とする「煉切(ねりきり)細工」を中心に、作品や技法など、繊細で美しい和菓子の世界をオールカラーで紹介する。「子どもが憧れる存在に」ーー。気鋭のアーティストはこれからも人々を魅了し続ける。

 

三堀さんは横須賀生まれで現在も市内在住。2010年にテレビ東京の「TVチャンピオンR 和洋菓子職人選手権」で優勝し、一躍脚光を浴びた。

 

15年からは「一日一菓」と題して会員制交流サイト(SNS)で毎日作品を発表する。茶道と同じく、おもてなしの精神を持って菓子を創作し振る舞う「菓道」を提唱し、「菓道 一菓流」を開いた。所作の美しさにこだわり、アジアを中心としたワークショップのほか、昨年はオーストラリア・シドニーのオペラハウスでパフォーマンスを行うなど、和菓子の魅力を発信しようと世界を飛び回る。

 

84ページからなる写真集には、「日本の美を世界に伝えたい」との思いを込めた。説明文は日本語をベースに英訳版と仏訳版の2種類を用意。芸術的ともいえる作品の数々はもちろん、細かい細工をするために自ら考案した「針箸」や木型などの道具、和菓子の作り方も紹介する。また「原点」と題し、小学生の時から和菓子作りを手伝っていたことや、「和菓子のルーツ、中国を訪ねて」では、万里の長城での写真とともに、「まるで遠い祖先への『里帰り』のよう」とつづっている。

 

海を渡り、今強く感じるのは故郷・横須賀への「愛」だという。きっかけは昨年、世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に和菓子職人として初めて出展するため、フランス・パリを訪れた時。感銘を受けた最高峰のシェフが地元をこよなく愛し、地元を大切に商売をしている姿を目の当たりにした。

 

「海外に行くと『お店はどこ?』とよく聞かれる。これまではどうせ横須賀を知らないだろうと思って『東京のちょっと下です』とか答えていた」と三堀さん。しかしパリでの経験で、「自分を育ててくれたのは何かを思い知らされた。それは横須賀。これからは胸を張って『横須賀で育ちました』と言って、この写真集を世界中に持って歩きたい」と熱く語る。

 

2900円(税抜き)。いづみや(本店・横須賀市衣笠栄町)や同社サイト、三雄堂書店仲通り店(同町)、代官山蔦屋書店(東京都渋谷区)のほか、アマゾンや出版元の日興美術(静岡市)のサイトなどから購入できる。

問い合わせは、日興美術電話054(263)2211。

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