(写真・琉球新報社)
沖縄県南城市の観光施設「ガンガラーの谷」内のサキタリ洞遺跡で、約2万3千年前の世界最古の釣り針が発見された。国内最古の人骨である山下洞人(約3万6500年前)に次ぐ約3万年前の幼児人骨も見つかった。さらに旧石器人が海や川の動物を採取し、食料としてきた文化が3万年以上前から2万年余りの間、ほぼ途切れずに存在したことが明らかになった。「人骨は出るが文化が分からない」とされてきた旧石器時代の沖縄に独自の文化があることが示されただけでなく、日本の旧石器時代文化の解明につながる大きな成果となった。
「ガンガラーの谷」を運営する株式会社南都の協力で2009年から調査を続けてきた県立博物館・美術館が、17日にマスコミ発表した。調査中の遺跡には二つの調査区があり、今回は調査区1での成果。
釣り針の大きさは約1・4センチ。ニシキウズ科の貝の底部を割り、先端が徐々に細くなるようとがらせている。同じ地層から研磨に使ったとみられる砂岩片も見つかった。12年に発見、周囲の木炭の放射性炭素年代測定により年代を特定した。未完成品も1点あった。アオブダイやオオウナギの骨も見つかっておりこれらの魚を釣った可能性がある。
出土品には、海産貝製のスクレイパー(ヘラ状の道具)やビーズもあり、貝を割って砂岩で磨き多様な道具や装飾品を作る文化があったことが分かった。
大量に見つかったモクズガニの爪やカワニナの貝殻の分析の結果、カニが最も成長する秋に採取されていたことが分かった。モクズガニの旬の時期にこの場所を拠点に採取し食べていたとみられる。
県立博物館・美術館の前館長で考古学が専門の安里進・県立芸大付属研究所客員研究員は「沖縄の人類のルーツが山下洞人の時代までさかのぼることがほぼ確実になった。旧石器時代と貝塚文化のつながりがだんだん見えてきた」と語り、調査のさらなる進展に期待した。調査成果をまとめた共同執筆論文が「PNAS」(米国科学協会紀要)に掲載され、オンライン公開されている。県立博物館・美術館は11月15日から特別展「港川人の時代とその後―琉球弧をめぐる人類史の起源と展開―」を開催し、今回発掘した遺物などを展示する。
<用語>サキタリ洞
南城市玉城字前川にある洞穴遺跡。港川人が見つかった港川フィッシャーから約2キロ。2009年から県立博物館・美術館が発掘調査を行っている。これまで9千年以上前に埋葬されたとみられるほぼ全身の人骨が見つかっている。