image

 

北谷町から嘉手納町へ国道58号を北上し、嘉手納ロータリーの手前で左折すると、この地に長年暮らす町民の営みが見えてくる。老舗も新しい店も交ざって店を構える「新町通り」と「みなと通り」の二つの通りを中心に嘉手納の街中をほろほろ(ぶらぶら)した。

 

◇カデナいまむかし

 

ロータリーを国道側から海のある西側に歩くと、両脇にはお店がずらり。午後3時すぎ、地域の酒屋「伊佐商店」【1】をのぞくと、楽しそうに笑う3人の姿が見えた。

 

あいさつすると「まあ、座って、座って」と、店主の伊佐ツルさん(91)が椅子を持って来て仲間に入れてくれた。瀬長キク子さん(77)、神谷美代子さん(70)は「もうこっちに来ないと夜は眠れなくてね。いつもここでユンタクしてから帰るの」と笑う。

 

伊佐さんが店を構えて70年。「ベトナム戦争の頃、新町通りはにぎわっていて、お店の外にも商品広げて何でも売ってたの」と伊佐さんが振り返ると「そう、この道は人だらけで走れなかった」と神谷さん。

 

お茶を飲みながら会話を弾ませていると、ウオーキング途中だった山根正美さん(66)がぶらりとやってきた。「ビールもらうね」とお店の冷蔵庫から缶ビールを取ってプシュッ。おしゃべりに交ざった。

 

次のお店はマフィンとカップケーキの専門店「charm」【2】。町出身の又吉真姫さん(42)は宜野湾市に住みながらお店を始めて5年。「みんなフレンドリーな町だから、絶対お店開くときは嘉手納でやるって決めていた」と地元愛たっぷり。

 

木目調のカウンターを据え、ドライフラワーをあしらった温かみのある内装の店内に10種類のマフィンが並ぶ。しっとりとした生地にほどよい甘さのマフィン(140円〜)にはファンも多い。

 

◇豊かな自然 すぐそばに

 

新町通りからみなと通りを通り、読谷村との間を流れる比謝川沿いを歩いてマリンレジャーの海あしび【3】へ。迎えてくれた矢田純一副店長が「都会の中に大自然があるんです」と話し、嘉手納漁港まで連れて行ってくれた。比謝川沿いにはマングローブが群生し、夏の夜には蛍が光る自然が豊かな場所だ。

 

漁港からはカヤックをこいで、まずは通称「赤橋」と呼ばれる比謝川大橋まで。意外なほど青い比謝川を「イッチ、ニ」と掛け声を合わせてこぐ。自動車がひっきりなしに通る下に自然が広がるコントラストに感動していると、矢田さんが「そろそろ日没の時間なので海側に向かいましょう」と教えてくれた。

 

比謝川の下流までこぎ、海との境から西の空を望むと、雲の隙間から太陽が沈む様子…を拝みたかったが、この日は分厚い雲が空を覆っていた。泣く泣く美しいサンセットは諦めたが、パドルをこいで温まった体に海風を感じ、爽やかな気分を味わった。

 

◇ディープなネオン街

 

約1時間のカヤック体験を終えたころには、辺りは薄暗くなっていた。

 

運動不足の記者たちの腕がどっと重くなったところで、みなと通りへ向かうとおいしそうな匂いが漂う。

 

通りに面した店先でたこ焼きを作っているのは「たこ焼きホム」【4】の玉城みっちーさん(57)。小学生から80代まで幅広い年代がアツアツのたこ焼き(250円〜)を求めて集う。

 

「前はスナックや漁業関係で働いていたけど、たこ焼きが大当たりして」とにっこり。午後3時から9時ごろまで、たこ焼きと大判焼きを販売している。

 

午後8時ごろからみなと通りのスナックのネオンが光り始め、夜の表情に。通り一番の老舗「大学」【5】に入ると、もう既にお客さんが楽しんでいた。

 

「もう30年間、大学に通っているけど卒業証書がもらえないのよ!」と冗談が飛び出す。

 

お店を続けて46年になる金城美代さんは「昔からのお客さまがたくさん来てくれる。人と話すのが好きで楽しくて、元気なうちはやめられない」と和やかな笑顔でビールを出してくれた。

 

入り口近くの席では、女性4人組が楽しく談笑中。家が近くの模合仲間で集まったのだという。最も先輩の宮平チエさん(84)は「自分のお店のような雰囲気なのでよく来る。今日は夕飯を済ませた後に飲もうとみんなで約束してね」といたずらっぽく笑い、グビッと飲んだ。

 

私たちも名残惜しいけどおいとまを。新町通りに再び戻って一本奥の道に入ると、コンクリート打ちっ放しの外観に小さな窓から店内のろうそくの明かりが漏れるバー「carne」【6】を発見。

 

宮城將豪さん(39)にお薦めのワインを聞くと、2種類の産地のワインを飲みやすくブレンドしてくれた。酔いが回ってきたかなというところで、取材は終了。後はお酒を楽しむトミー記者としみず記者であった。

 

(2018年2月4日 琉球新報掲載)