今回平田さんらが捕まえた金色のティラピア。色素が少ないため、このような色合いになっています (写真提供・平田章さん) 画像を見る

 

9月上旬、読者から「金色のティラピアを発見しました!」との情報が。島ネタCHOSA班としては、見逃すわけにはいきません。さっそく現場に直行しました。

 

ティラピアといえば、沖縄の河川や池ではおなじみの淡水魚。でも、普通は青灰色ですよね。それが金色とは…!?

 

「金色のティラピア」を発見したのは、南風原町の平田章(あきら)さん、歩夢(あゆむ)さん父子と、歩夢さんの南風原中学校の同級生・徳重仁陽さん。

 

「宮平川に金色のティラピアがいる」と歩夢さんから教えられ、その存在を確認。「息子の友人の徳重君と一緒に、2時間かかって大きな網に追い込んで捕まえた」と章さんは捕獲の経緯を話します。

 

捕獲した時の写真を見せてもらうと…。見事な金色です! でも、なぜこんな色に?

 

色素薄い「黄化個体」

 

沖縄の淡水魚に詳しい専門家に話を聞くことにした調査員。向かったのは、琉球大学理学部。海洋自然科学科 生物系の教授・立原一憲さんのもとを訪ねました。

 

立原さんに写真を見せたところ、これは「黄化個体」と呼ばれるものだとのこと。色素が通常の個体よりも薄いため、このような色になるそう。完全に色素がない「アルビノ」は目が赤く、体色も淡橙色になることが多いのですが、今回見つけた金色のティラピアは完全に色素が失われていないため、目が黒く、このような体色になっているとか。

 

魚の世界では時々見られる現象で、ナマズなどに出ることがあるようですが、長年県内の河川の調査を重ねる立原さんもティラピアでは初めて、と目を丸くします。

 

これで調査完了…と思いきや、立原さんが「じつは、『ティラピア』という名前の和魚はいないんですよね」と思わぬ一言。
ええっ、どういうこと!?

 

実は外来魚

 

立原さんによれば、沖縄でティラピアと呼ばれているのは、和名が「カワスズメ」「ナイルティラピア」と呼ばれるもののどちらか、もしくはその雑種個体なのだとか(今回の黄化個体もナイルティラピア系の交雑種らしいとのこと)。

 

「カワスズメとナイルティラピアは、昔はティラピア属に分類されていましたが、現在はオレオクロミス属に分類されています」。えっ、属が違うなら、本当はティラピアとはいえないですよね…。驚きです。

 

ちなみに、沖縄にはもう1種類、本当にティラピア属の魚「ジルティラピア」が生息していますが、生息域が南部の一部地域に限られており、小型なので前述2種の幼魚だと勘違いされているケースが多いのだそう。

 

「カワスズメは1954年、ナイルティラピアはその翌年に食用目的で沖縄に移入されました」と立原さん。

 

え? 沖縄にもともといた魚ではないんですか!?

 

「アフリカ原産です。繁殖力が強い魚なので、その時に放されてしまったものが本島全域に定着してしまったのです」。知りませんでした…。

 

「沖縄島には、ここにしかいないメダカ、タウナギ、フナなど、固有種の淡水魚が多くいます。外見ではなかなか見分けがつかないため、昔は固有種はいないと思われていたのですが、近年、DNAの分析により、そのことが分かってきました」

 

しかし、開発に伴う環境の変化や外来種の繁殖で追いやられるなどして、フナをはじめ、多くの種が絶滅の危機にひんしている、と立原さんは警鐘を鳴らします。実際に沖縄島のリュウキュウアユは1978年に採集された個体を最後に絶滅してしまったそう。

 

「在来種を守るためには、水質や河川構造の改善が必要。あとは、外来種を入れない、また数を減らすことですね」。県内ではいまだに、一部の人が釣り目的でブラックバスを放流しているケースなどもあるそうですが、貴重な固有種を守るためにも、絶対にNGです。

 

金色のティラピアをきっかけに、沖縄の淡水魚についても知ることができた今回の調査。これからも、沖縄固有の貴重な淡水魚を守っていきたいですね。

 

(2019年9月26日 週刊レキオ掲載)

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