「先生1人で授業しているみたい」 コロナ休校終え「高速」で進む授業、ついて行けず 教員は葛藤
塾で自習する中学3年の男子生徒ら。学校の授業の進度が速く、ついて行けない教科も出ているという=9月7日、本島中部

 

新型コロナウイルスによる長期の臨時休校を終えて再開した沖縄県内の学校は、休校中に滞った学習内容を取り戻すことに力を注いでいる。しかし、授業の進度が速く、ついて行けない児童生徒も出ている。教員は丁寧に教えたいという気持ちと、教科書の内容を終わらせなければならないという使命感の狭間で葛藤している。

 

「先生は1人で授業をしているみたいだ」

 

本島中部の学校に通う中3の男子生徒は「高速」で進む英語の授業に不満を漏らす。教師から「線を引いて」と指示を受けて教科書に蛍光ペンで線を引いていると、教師はその間も教科書を読み進め、全く追い付かないという。「待って」という間もなく、気付けば線を引くだけで授業が終わっている。

 

休校は2学年の終わりにもあり、その間にできなかった理科の「磁界」の単元は3学年の初めに3時間で終わった。ほとんど理解できず、復習の時間も取れていない。「今、磁界の問題を出されても1問も解けない」と不安を口にした。

 

本島中部で「総合学習塾ポテンシャル」を7校運営する「I am」代表取締役の安里純平さん(35)は、生徒の学校に対する不信感が例年より高いと感じているという。塾の授業中、学校の教師の教え方に不満を訴える生徒には「コロナだから仕方ない」と諭す。「勉強を教えるという立場は学校の教師も塾の講師も同じ。教師の苦労は人ごととは思えない」と、学校の教師の心境をおもんぱかる。

 

一般的に、塾と学校は敵対関係にあることも多いが安里さんは「学校で教え足りなかった分を塾で補うなど、子どもにとっていい関係が築けないか」と、コロナ禍で協力関係になることを願う。

 

県教育委員会は休校が長期に及んだことを考慮し、県立高校入試の出題範囲を狭めた。文部科学省も標準授業時数に満たなくても学校教育法に反しないとの考えを示し、教えられなかった分は次の学年へ繰り越すこともできるとしている。

 

教育行政は現学年での「教え残し」を容認するメッセージを発しているが、ある教員は、額面通りに受け取れないと訴える。通知文書に「学年内に指導が終えられるように努めても」という文言が入っているからだという。

 

「つまり、教えることは教えないと、という意味で、遅れている児童は無視し授業を進めなさい、とも受け止められる。学力の差がより大きくなる状況だ」と話した。

 

別の教員は「教科書の内容を終えなければならないという考えは教師に染み付いている」とも指摘する。「本年度中にまた臨時休校しなければならないかもしれないし、来年度は休校がないとも言い切れない。丁寧に教えたいという気持ちは強いが、授業ができるうちに進めたいとの考えも頭をよぎる」と語った。
(稲福政俊)

 

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小中高校で新学習指導要領の適用が順次始まるなど、教育界は変革の時期を迎えている。新型コロナウイルスによる休校で注目を集めたオンライン授業、学力向上の取り組みと弊害など、最前線の動きや長年続く課題に焦点を当て県内の「学び」を考える。

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