県費留学の事業存続などを訴える留学経験者らのコラージュ画像(提供) 画像を見る

 

高校生を対象とした県費留学事業が新型コロナウイルスの影響で中断している。県はグローバル人材を育成する目的で毎年80人程度を諸外国に派遣しているが、昨年度の派遣生徒は留学プログラムを中断して帰国した。本年度は派遣中止、来年度は募集停止が決まった。高校生が意気消沈する中、派遣経験がある大学生らは独自の相談会を開催し、支援を模索する。事業存続を求めるネット署名も展開している。

 

県費留学は国際的に活躍できる人材育成のため、県が留学プログラム費用を助成する事業で、長年実施されてきた。2012年度以降は一括交付金を活用した「国際性に富む人材育成留学事業」として、毎年1億円強の派遣費を予算に計上。同年度以降、米国や欧州、アジア諸国に累計約600人を派遣した。

 

唯一のチャンス

 

多額の留学費用を県費で大幅に軽減できるため、県費留学を「唯一のチャンス」と捉えていた高校生は少なくない。卒業後は対象外となるため、1、2年の中断でも多くの高校生の留学機会が断たれる。

 

派遣目前で中止が決まり、ぼうぜん自失の高校生を支援したいと立ち上がったのは、県費留学事業で派遣された先輩たちだ。8月上旬には県内外の大学に進学する約50人が、オンラインで相談会を開催した。留学経験を語るなど、支援策を実行している。

 

異文化触れ気付き

 

国際基督教大学に通う國仲杏さん(20)も支援に取り組む経験者の一人だ。16年度に米国へ派遣され、異文化に触れた。國仲さんが留学したのは人口3千人程度の小さな町。白人中心でアジア人は少なく、「イエロー」と呼ばれるなど人種差別も経験した。当初は言い返す勇気もなく無視していたが、差別体験を通して日本人、ウチナーンチュ、アジア人として誇りを持っていることに気付き「誇りを持っているものを侮辱されるのはつらい」と、積極的に反論した。

 

國仲さんは留学を通し「偏見を偏見で終わらせない、差別を放置しないことが大事だと思った」という。「レッテルを貼る人ではなくはがす人になりたい。そのためには対話と理解が大切だと思う。このことはウチナーンチュに囲まれて多数派にいる環境では考えられなかった。留学でこそ得られたものだ」と留学の意義を語る。

 

國仲さんら留学経験者はネット署名活動を展開している。事業再開に向けたガイドライン作成、コロナ収束後に同規模で事業再開を求めるもので、23日現在、900人超の賛同を得ている。集めた署名は県に提出する予定だ。

 

國仲さんは「県費で留学したのだから経験を還元する。OB、OGのつながりで、できることは何か考えたい」と話した。

 

ネット署名のサイトは「Change.org」(http://chng.it/PTCbdgZGKP)。
(稲福政俊)

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