高校教科書で沖縄戦の学徒戦没者慰霊碑を「顕彰碑」と表記した問題で声明を発表する「元全学徒の会」の與座章健共同代表(中央)ら=1日、那覇市首里金城町の養秀会館(喜瀨守昭撮影) 画像を見る

2022年度4月から使用する「歴史総合」の一部の教科書が一中健児之塔を「顕彰碑」などと記していた問題で、沖縄戦に動員された県内21の師範学校や中等学校の元生徒らでつくる「元全学徒の会」は1日、教科書記述に関する声明を発表した。同会共同代表の與座章健さん(92)は「いかなる戦争であれ、それを美化することは許されることではない。沖縄戦を生き残った学徒だからこそ、沖縄戦認識の根幹を正していくことを責務と考えている」と声明を読み上げた。

 

明成社の「歴史総合」は沖縄戦を紹介する中で、県立第一中学校の戦没者らの名前を刻み、慰霊する一中健児之塔(那覇市首里金城町)の写真に添えた説明文に「県立第一中学校の戦没学徒の顕彰碑」と記した。同じ文中でひめゆり学徒隊を「ひめゆり部隊」と表記した。

 

声明では、一中健児之塔は戦没学徒を顕彰するためではなく、慰霊し、恒久平和を祈念するために建立したことを強調した。ひめゆり学徒隊は軍隊に補助要員として動員され、看護に従事したことに触れ、「部隊」とすることで「独立編成し、軍隊と一緒に戦ったという印象を受ける」としている。声明は「学業半ばに戦場に駆り出された10代の学徒は、銃弾の中を潜り、狭い壕でうずくまり、苦しみながら死んでいく人を目の当たりにし、人間の死の極限状態を経験した」と記した。

 

沖縄戦当時、一中に在籍し、同会の幹事を務める宮城政三郎さん(92)は「会として無視することはできない。恒久平和を祈念し、戦没学徒を慰霊するために(慰霊碑を)建立した。顕彰碑ではない。中学生が戦争に動員されたことを美化するような表現になっていて、憲法改正につながる前段になる」と危機感をにじませた。同会共同代表の瀬名波栄喜さん(92)は「歴史は真実を明かさなければならない」と訴えた。

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