羽生結弦 負けて書き殴ることも…コーチなしの孤独支える練習日誌
画像を見る 練習・試合の調子などを記入した羽生のノート(’19年放送『news every.』より)

 

■ノートは“心の整理整頓”に繋がる

 

「練習後、試合後はもちろん、寝る前に布団のなかでひらめいたら、わざわざ起きてノートに書いたりすることもあると話していました」(前出・フィギュア関係者)

 

スポーツライターの折山淑美さんによると、トップアスリートのほとんどが練習日誌などのノートをつけているという。

 

「どんな練習をしたか、そのときに感じたこと、何がだめで何がいいのか。書き方は人によってさまざまですが、羽生選手のほかには、陸上の山縣亮太選手や、スピードスケートの小平奈緒選手のノートの習慣も有名です」

 

『ジュニア選手のための夢をかなえる「スポーツノート」活用術』(メイツ出版)を監修した専修大学スポーツ研究所顧問の佐藤雅幸教授にノートの効用を聞いた。

 

「たとえば、自分の頭のなかで考えるだけでは、人は思考をなかなか整理できません。そこで“書く作業”をして自分の取り組みや感情をいったんアウトプットしてみる。そうすると客観視ができるので冷静に分析できる。執着や心がとらわれた状態から解き放たれるので“心の整理整頓”にもつながります」

 

一人で練習する羽生の現状にもノートの存在が助けになっているはずだと佐藤教授は続ける。

 

「ノートをつけ続けているアスリートは、指導者に依存せずに自分で考えることができるもの。羽生選手もそうです。自分で自分を育てることができるのです。また、悩みが生じたときは過去のノートを見返して“ここの動きはこうだった”“前に悩んだときはこう乗り越えた”と確認することもできるでしょう」

 

長年、羽生を見守り続けてきた前出の菊地さんも次のように話す。

 

「小さいころから書きためてきたノートを見れば、自分が何を考え、どのように成長してきたか一目瞭然です。スケートが大好きで、夢中になって滑っていたかつての自分を思い出すこともできるでしょう。それがいまの結弦のモチベーションにもつながっているのではないでしょうか」

 

コーチは過去の自分ーー。ノートをめくりながら羽生は今日も孤高の練習に励んでいることだろう。

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