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「素晴らしかった。初めてに見えないくらい、堂々とコントロールしてくださった。試合が荒れなかったのは審判の方のおかげでもあるので、ありがたいと思います」

 

サッカー日本代表でFC東京に所属する長友佑都(36)は激闘の後、この歴史的な一戦を担当した主審について、こう称賛した。

 

9月18日、東京・国立競技場で行われた、J1リーグFC東京×京都サンガF.C.戦で、日本のサッカーに新たな歴史が刻まれた。

 

試合開始前、5万994人の大観衆の視線はフィールド中央に集中。両軍の選手ではなく、センターサークルから5mほど離れて直立する、ライムグリーンのユニホームに身を包んだ女性に、だった。

 

ロングヘアを後ろで束ね、唇を結んでキリリと表情を引き締めた彼女は、山下良美さん(36)。

 

女性初のプロフェッショナルレフェリーで、この日J1史上初の女性主審を務めたパイオニアだ。

 

1秒ほど笛を吹いてキックオフを告げると、次の瞬間、白い歯を見せて彼女は、笑ったーー。

 

日本で初めてサッカー全国大会が開催された1921年の天皇杯 全日本サッカー選手権以後、男子の主要大会には長らく男性の審判しかいなかった。

 

そんななか女子の国内リーグや国際戦で主審の経験を積んできた山下さんは、’19年の男子の国際戦AFCカップで女性初の主審に選ばれた。’21年5月にJ3、そしてこの日、ついに男子のトップリーグであるJ1公式戦の笛を吹いたのだ。

 

熱い視線が彼女に集中したのには、もうひとつ理由があった。11月20日開幕のFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ・カタール大会に、女性初の主審として選ばれた3人のひとりに、彼女が決定したからである。

 

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