「熱中症について調べていたら、気になるニュースがありました。それは、気温に関連した死亡のほとんどが、暑さより寒さが原因というものです」
こう語るのは、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。この季節、熱中症対策は必須だが、死に至るのは暑さより寒さだというのだ。
「これは、長崎大学熱帯医学研究所の橋爪真弘教授らが参加した、国際共同研究グループの調査結果です。この研究グループは、日本など世界13カ国で、’85〜’12年に死亡した約7,400万人のデータを調査。そのうち約570万人が亡くなったときに気温が関わっていると推測しています」
気温に関連する死亡とは、理解しにくいかもしれないが、たとえば熱中症もその1つ。さらには糖尿病や高血圧、不整脈などの持病があり、それが気温の変化によって、悪化して亡くなってしまうことも。心筋梗塞、脳梗塞などの疾患が考えられるという。
「この調査では、もっとも死亡率が低い気温を『基準値』として、わかりやすく説明すると、それよりも『猛烈に暑い』『暑い』『寒い』『猛烈に寒い』などと分類。その結果、『猛烈に暑い』『猛烈に寒い』よりも、『寒い』がきっかけで死亡したケースが大部分を占めていたというのです」
気がかりなことは、気温に関連した死亡率の高さで、日本は、中国、イタリアに次いで、3位にランクインしたこと。「猛烈に暑い」「猛烈に寒い」ときはある程度、自分の体に気を配るのかもしれない。しかし、「寒い」程度ならば油断をしてしまうということもあるようだ。
「いずれにしても、気温の変化に対する意識は、私たち日本人は甘いと言えるでしょう。たとえばこの季節、必要以上にクーラーを効かせてしまい、暑い外との温度差ができること。この寒暖差は体調不良を起こし、5度以上の急激な温度の変化は、自律神経のバランスを崩してしまいます。血流も悪くなり、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクも高めてしまうことでしょう」
熱中症だけでなく、冷房による温度差など、夏は体調を崩す危険がたくさん。快適な温度で過ごしたい。