「夏の疲れが出て“秋バテ”になっている人が多いですが、疲労回復には糖質が必要。しかし、お菓子などの加工食品で糖を取ると、体に負担をかけるうえ、太ります。そこで活躍するのが梨。“フルーツは糖質が多くて太る”というのは誤解で、甘さと糖質量、カロリーは関係ありません」
そう語るのは、東京大学の教員を辞めたあと、フルーツ研究にまい進するエキスパートの中野瑞樹さん(40)。今回、秋バテを改善し、美ボディに導くという梨の秘密を中野さんが教えてくれた。
「お菓子やジュースなど加工食品に含まれる糖は『フリーシュガー』と呼ばれ、1日25g未満にするようWHOが勧告しています。対して生のフルーツに含まれる糖は『ノンフリーシュガー』で、体に負担をかけず、脳や筋肉のエネルギー源となります。“秋バテ”中の人は、お菓子を控え、水分がたっぷりの旬のフルーツを食べるのがいちばん。梨がもっとも適任ですね」
さらに、梨は適量を食べれば太らないだけでなく、ほっそりウエストにも導いてくれるという。
「梨を食べるとシャリシャリしますよね。それは“石細胞”といわれるリグニン、ペントザン、セルロースなどの不溶性食物繊維の食感。よくかむ必要があるため、口内の唾液を増やしてくれます。また、ソルビトールという成分も重要。糖質の一種で、砂糖の6割ほどの甘さがあり、キシリトールと同様に虫歯の原因にならない糖質です。これらソルビトールや食物繊維は胃腸ではほとんど消化吸収されず、大腸まで届いて善玉菌の餌となり、腸内環境を整えてくれます。さらに、吸水性があるため体内の便を軟らかく、そして膨張させるため、大腸が刺激されて便秘改善に導いてくれるのです」
フルーツが便秘解消に絶大な効果があることはすでに証明されている。
「日本人女性およそ4,000人を対象とした研究によれば、水やお茶やジュースは便秘改善に効果がありませんでしたが、食品からの水分摂取が多いと22〜29%も便秘率が低くなることがわかりました。梨は88%が水分なので、便秘解消にはうってつけなんです」
また、体にたまる“水毒”も、梨に含まれるカリウムが解決してくれる。
「東洋医学では体にたまる代謝の悪い水分のことを“水毒”と呼び、むくみ、冷え性、生理痛、膝痛などは水毒による症状とされています。梨には利尿作用のあるカリウムが含まれるので、不要な水分、つまり水毒を体外に排出してくれます。また、日本人の食事は塩分(ナトリウム)量が多いため、脳卒中のリスクが高い。カリウムはナトリウムを体外に排出してくれるので、脳卒中予防にも効果的です」
さらに、美白成分として有名なアルブチンが膀胱炎予防にも効果を発揮する。
「梨にはポリフェノールの一種であるアルブチンが多く含まれています。女性に多い疾患に腎盂炎、膀胱炎、尿道炎などの尿路感染症がありますが、これらの患者がアルブチンを摂取すると、尿路感染の原因となる細菌の繁殖を抑制することがヨーロッパの研究で明らかにされています」
この秋は1日1個の梨生活で、おなか回りから元気になろう!