「ひざ痛が起きても、ひざを正しく伸ばすストレッチを続ければ、痛みも和らぎ、楽に歩けるようになります。ひざのトラブルはセルフケアで改善できますよ!」
こう語るのは、さかいクリニックグループ(東京都北区)代表の酒井慎太郎さん。柔道整復師の酒井さんは、これまで延べ100万人以上に施術。腰や首・肩、ひざなど関節の痛みを緩和するストレッチ体操を推奨している。今年3月には『変形性膝関節症は自分で治せる!』(学研プラス)を出版した。ひざの痛みは多くの場合、ひざ内部で異常が起こる「変形性膝関節症」が原因だという。
「運動不足や加齢、また前かがみなど悪い姿勢のままで生活を続けると、太ももの内側の筋肉が衰えます。すると、軟骨や半月板がすり減り、関節のクッション機能が低下します。これは40代から始まるので注意が必要です。摩耗した軟骨や半月板の“かけら”は、関節包の内側にある神経を刺激します。さらに、滑膜に炎症が起こり、関節包内に水がたまると、腫れて熱を帯びてきます。この症状はすでに変形性膝関節症の後期ですが、今回紹介するようなストレッチ体操によって、ひざの動きがスムーズになり、少しずつ痛みが和らぎます」(酒井さん)
そこで、酒井さんが「変形性膝関節症タイプ・中期」「変形性膝関節症タイプ・後期」を解消する簡単ストレッチを教えてくれた。まずは「ひざ痛」の症状をチェック。
【変形性膝関節症・中期】
□ ひざをねじるような動きをすると、ピリッとした痛みが走る
□ ひざの内側に、ときどきチクチクした痛みが走る
□ 階段を上るときも下りるときも、ひざに痛みを感じる
□ 正座をすることがかなりつらい
□ ひざが腫れたり、熱を帯びることがある
※チェックが2つ以上当てはまる項目がある場合、ストレッチ1〜6、8を
【変形性膝関節症タイプ・後期】
□ 「O脚がひどくなった」と感じたり、指摘されたりする
□ 立ち上がるとき、歩き始めるときなどにひざが痛む
□ 歩くとき、上半身が左右に揺れるようになった
□ 片ひざだけだった痛みが、両ひざとも感じるようになった
□ 手すりやつえに頼らないと怖くて歩けない
※チェックが2つ以上当てはまる項目がある場合、ストレッチ1〜8を
【1】ひざ押しストレッチ
片足を低めのいすや平台などにのせ、ひざを真っすぐに伸ばす。手のひらをひざにのせ、なるべく垂直に押し込む。この体勢を30秒キープ。もう片方の足も同様に行う。1日2〜3回が目安。
【2】入浴ひざ曲げ伸ばし体操
1. バスタブの中で、両足を伸ばして座る。ひざに手のひらをのせ、腕で押し込む。この体勢を30秒キープ。2. ひざを抱え込むようにして最大限曲げる。この体勢を30秒キープ。3. 立ち上がって、ひざを片方ずつ伸ばす。手のひらをひざにのせ、体重をかけるように押し込む。この体勢を30秒キープ。もう片方の足も同様に。以上をワンセットとして入浴のたびに行う。※すべりやすいので転倒には注意。
【3】テニスボールストレッチ
1. ひざ裏の中央にテニスボールを当てる。2. 両手で足を抱え込むようにひざを曲げ、あおむけに寝る。この姿勢を30秒キープ。もう片方の足も同様に行う。1日1〜3回を目安に。
【4】クッション挟み体操
1. いすに座り、両足を肩幅程度に広げ、ひざでクッションを挟む。2. クッションを落とさないよう、両足を締めながら立ち上がる。この体勢を30秒キープする。1日1〜3セットを目安に。
【5】太もも伸ばしストレッチ
1. ひざ下をいすの上にのせて立ち、両手は腰に当てる。2. いすにのせたほうの足の力を抜き、ひざの位置をうごかさないようにしながら腰を落とし、前方に出ている足を曲げる。1日1〜3セットを目安に行う。
【6】タオルケットぐるり巻き
1. 就寝前、ベッドなどにタオルケットを広げ、左右中央に座る。タオルケットの両端を引っ張りながら、左右の足をそれぞれ包むように巻き付ける。2. タオルケットの両端を内股に差し入れ、両足が真っすぐな状態で固定してから、そのまま寝る。眠りにつくまでの姿勢として就寝のたびに行う。
【7】タオル引っ張り体操
いすに座って、長めのタオルなどの両端を持ち、片足の裏上部分に引っかける。ひざを真っすぐに伸ばし、両腕を手前に引き寄せる。この姿勢を30秒キープする。もう片方も同様に。1日1〜3回を目安に行う。
【8】ひざのお皿回し体操
床に座り、足の力を抜く。ひざのお皿の骨(膝蓋骨)の縁に両手の親指と人さし指の腹を当て、お皿を左右前後に動かすように30秒、さらにお皿を回転させるように30秒、動きを加える。もう片方も同様に。
簡単ストレッチで、ひざの痛みを一気に改善しよう!