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「山縣君はスタートがうまく、その後の重心移動も、まるでリニアモーターカーのようにスムーズにスピードに乗る。今までの日本人にいないタイプの選手ですね」

 

そう語るのは、リオ五輪・陸上男子100メートル代表の山縣亮太選手(24・セイコーホールディングス)の恩師で、慶應義塾大学競走部監督の川合伸太郎さんだ。

 

「山縣君に初めて声をかけたのは、まだ彼が高校生時代のインターハイ。当時はまだ3番手の選手でしたが、“慶應に入れば強くなる”と確信していました」

 

自分で工夫をする自由な練習環境にある同大だからこそ、ストイックな山縣選手は力を伸ばしていけたのだと川合監督は分析する。

 

「性格は一貫して変わりません。ほかの人の意見は聞くけれども、自分が納得しなければ事を進めない頑固さがあります。“自分が一番”だと思っている走りに関しては、私は何も言いません。日本を代表する、尊敬される選手になるための“生活指導”がメインですね」

 

川合監督の予言は的中し、前回のロンドン五輪でも好成績を収めたが、その後は肉離れや腰痛などケガに苦しんだ。

 

「でも、ケガも無駄ではありません。昨年、腰痛のとき、山縣君はプールを使った練習や、体幹トレーニングを積極的に取り入れました。そのおかげで上半身や腰回り、太ももなどにも、普通の筋トレでは鍛えられない筋肉を得られました。さらには精神的な強さも身につけられました」

 

今年6月には、10秒07だったロンドン五輪の自己ベストタイムを、10秒06に更新した。

 

「わずか100分の1秒。ですが、そこにはケガという苦難を乗り越えたからこそ手にした、大幅な肉体的成長と精神的成長があるんですね」

 

だからこそ、リオ五輪では日本人初の9秒台も現実的だという。

 

「桐生(祥秀)君、ケンブリッジ(飛鳥)君など、これまでにない強いライバル、そして五輪という大きな舞台は、きっと山縣君にも“大きな力”を与えてくれると思います」

 

リオは山縣が日本の陸上界の歴史に名を刻む大会になるに違いない。

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