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「私の患者さんに、薬を先発医薬品からジェネリック医薬品に替えたところ体調が優れなくなった、という方が何人もいるんです」

 

そう話すのは、医療法人社団双壽會理事長で、東京都品川区の秋津医院の秋津壽男院長。「ジェネリックにしてから病状が悪化した」「薬の効き方が違う気がする」「副作用が現れた」――。持病を抱え、長いこと薬が手放せずにいる患者のなかに昨今、こんな声を上げる人が少なくない。

 

ジェネリック医薬品(以下、ジェネリック薬)とは、新薬の有効成分の特許が切れた後、別の製薬会社が製造、販売する同じ有効成分の医薬品のこと。数百億円もの開発費や長い開発期間を要しないため、薬価は先行した新薬の7割以下だ。

 

薬への出費が抑えられると、ますます普及しているジェネリック薬。一見、患者にとってはありがたい話だが、主成分は先発薬と同じでも、“効き方”には違いが出ることも……。ジェネリック薬は必ずしもいいことずくめというわけにはいかないようだ。

 

秋津院長は、「ジェネリック薬との正しい付き合い方」として次の4つを挙げる。

 

■“ジェネリック薬は患者(=国民)のため”という宣伝をうのみにしないこと

 

国の財政を圧迫し続ける医療費削減のため、政府は現状約60%の普及率を’20年には80%まで引き上げることを目標に掲げている。

 

「ジェネリック薬の処方割合が高い薬局ほど診療報酬が高くなる仕組みを作るなどして、国は強く誘導しています。だから、薬剤師さんは来る人皆に『ジェネリック薬に替えませんか?』と聞くんです。また、役所や保険団体から『去年のあなたの医療費はいくらでした、ジェネリック薬に替えるとこの金額になります』なんて手紙が来ると思いますが、これも、個人の財布をおもんぱかってのことではない。つまり、大前提として言えるのは『ジェネリック薬は患者さんのためのものではない』ということ」(秋津院長・以下同)

 

■先発薬と主成分は同じでも、薬の溶け方や保存性などに違いはあると知っておくこと

 

「残念ながら、先発薬とジェネリック薬はまったく同じではありません。新薬の製剤検査は非常に厳しい。効果が証明された薬でも、ちゃんと体内で溶けるか、この包装形態で湿気をきちんと防げるか、紫外線に何日当たっても問題ないか……など細かく厳しい検査をいくつも経て発売されます。一方ジェネリック薬の場合、同じ成分が同じ分量入っているか、ちゃんと溶けるか、その程度のチェックしかされない。包装形態のチェックも新薬ほど厳しくないので、保管中に質が変化し、効果が落ちる可能性も否定できません」

 

秋津院長は実感として、「いちばんの問題は薬の“溶け方”の差異」だと説明する。

 

「高血圧の患者さんで、1日1回飲めばいいという新薬を飲んできて、それをジェネリック薬に替えた途端、不調を訴える人が少なくないんです。血圧の薬は溶け方に工夫があり、ゆっくり1日かけて溶けて、成分が体内に取り込まれるようになっている。ところがジェネリック薬の場合、ゆっくり溶ける技術も導入していると言ってはいますが、なかには怪しいものもあって。薬を飲んだ数時間後に急激に血圧が下がってふらふらする、気持ちが悪くなる、そう訴える患者さんが実際、何人もいます」

 

■1つの先発薬につき、複数のジェネリック薬が販売されているケースもあることを知っておくこと

 

「ジェネリック薬を作るメーカーというのは、すごくたくさんあるんです。大手製薬会社が作っていた新薬の特許が切れると、いくつものメーカーがそのジェネリック薬を製造します。世の中にゾロゾロと出回り始めるので、医者の間でジェネリック薬を『ゾロ』と呼んでいるぐらい。もとは1つの新薬に、20種類ものジェネリック薬があるものもあります」

 

■もし、先発薬から替えた後に、体の不調を感じたら元の薬や、別のジェネリック薬を検討すること

 

「店舗スペースの問題から、1つの薬局に同じ成分のジェネリック薬を何種類も置いてはおけません。だから、もしジェネリック薬に替えて体に合わないと感じたら、別の薬局でもう一度処方してもらうことを勧めます。変えた薬局で処方された別のジェネリック薬が意外にも相性がいい、ということは十分にありうることだと思います」

 

そして、秋津院長はこう続ける。

 

「新薬とジェネリック薬の差異は、患者さんの感じ方に左右される部分も大きい。私は患者さんに『ブランド牛乳と特売の牛乳の違い』と説明しています。ブランド牛乳でないとおいしいと思えない人もいれば、牛乳ならなんでもいい、という人もいるでしょう。基本的にジェネリック薬の成分は新薬と同じ、いわば同じ牛乳なんです。でも、先に説明したとおり、完全に同じではないし、患者さんとの相性もある。血圧が下がりさえすればいいと思う人はジェネリック薬で問題ありません。一方、やんわり下がらないと、じんわり効く薬でないとつらい、そう思う人は薬局で遠慮なく言ってください。『元の慣れた薬に戻してください』と」

 

予期せぬ体調のトラブルに遭わぬよう、自分の体と薬との相性にも気を配るようにしたい。

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