お尻の悩みはついやり過ごしてしまいがち。だが、生活習慣を見直せば改善できるケースも多い。重症化する前に対策を!
「『痔は切らないと治らない』と思っていませんか? これは大きな間違い。たとえ手術で症状がよくなっても、毎日の生活習慣を変えない限り、痔は繰り返してしまいます」
そう話すのは、平田肛門科医院院長の平田雅彦先生。これまで生活習慣の指導をメインに、痔に悩む多くの患者を救ってきたスペシャリストだ。新著『38万人を診た専門医が教える 自分で痔を治す方法』(アチーブメント出版)では、痔のセルフケアを指南している。
「痔は、便秘や冷えなどが原因で肛門付近に起こる炎症をきっかけに発症します。さらに現代人は座る時間が長いためお尻に負担がかかりやすく、いまや日本人の3人に1人が痔をもっている、いわゆる“痔主”だといわれています。とくに女性は生理によるホルモン変化や、妊娠・出産が原因で男性より痔になりやすい。実際、私の患者さんの7割は女性です」
平田先生に、女性に多く見られる生活習慣の悩み別に対策を解説してもらった。
■便秘型
〈痔を引き起こす理由〉刺激物である便をため込むと肛門に炎症が起きやすくなる。さらに排便時に強くいきむと肛門の粘膜が傷つき、痔の原因に。
〈対策〉起床してすぐに水を飲み、胃腸を刺激して排便を促す習慣をつける。大豆製品や海藻などの食物繊維を積極的に食べるのも◎。
「食事で大切なのは、食物繊維をしっかりとること。それから、腸のぜん動運動を促しましょう。起床直後に手足をブラブラさせたり、水を2杯飲むのも有効です。便意を感じたら、我慢せずにトイレへ直行。前かがみの姿勢をとると肛門に対して直腸がまっすぐになり、便が出やすくなります」(平田先生・以下同)
座ってばかりいると肛門のうっ血を悪化させるので。1日5,000歩程度を目安にしたウォーキングも取り入れよう。
■冷え型
〈痔を引き起こす理由〉体が冷えて肛門の周りの血液循環が悪くなると、肛門が炎症を起こし痔を招く。室内でも冷えた場所で長時間働く人は要注意。
〈対策〉ストッキングを二重にはく、つま先と腰にカイロを貼るなど、冷え対策を万全に。毎日の入浴は、肛門のうっ血改善に効果あり。
「対策として、カイロを活用して腰を温めましょう。尾てい骨の上の仙骨と呼ばれるあたりを温めるとお尻のうっ血に効果があります。併せて、つま先用の貼るカイロを貼れば万全。入浴では、40度程度のお湯に20分以上浸かるとお尻の血液循環がよくなり、痛みが軽減します。脚を動かすスクワットは血行がよくなるので、オススメの運動です」
■ストレス型
〈痔を引き起こす理由〉ストレスを感じたときに放出されるアドレナリンが、肛門の炎症の引き金に。ストレスは免疫低下にもつながり炎症悪化の悪循環に陥る。
〈対策〉ストレスを受け流すコツを学ぶのが近道。手先を黙々と動かす手芸など、無心になって取り組める趣味もストレス解消に役立つ。
「とくに40~50代の女性は、子育ての悩みや親の介護などストレスが重なりやすく、家庭のトラブルで痔が悪化するケースも多いです。ストレスを忘れられる趣味を見つけるなど、ため込まないように気をつけましょう」
■生理型
〈痔を引き起こす理由〉ホルモンの変動により生理前は便秘、生理中は下痢になりやすく、その排便トラブルから痔を発症する女性が多い。
〈対策〉生理中は予定を入れすぎない、早めに寝るなどの対策で炎症の悪化を防ぐ。
「生理前後は睡眠をしっかりとる、ゆとりをもったスケジュールで生活するなど負担のかからないよう調整を。閉経が近い人は生理の予測がつきにくく、突然の便秘に悩むことがあります。生理前の時期は便秘も招きやすいので、食物繊維が豊富なプルーンを1日5個食べることをオススメします」
生活習慣の改善により、肛門の粘膜が修復されるサイクルは、約2カ月。3カ月続ければ、腫れや痛みの症状はかなり改善されるという。
「ただし、自己判断はせず、『痔かも』と思ったらまず病院へ。とくに、痔による出血だと思ったら大腸がんだったというケースもあります。生活習慣の指導をしてくれる医師と二人三脚で治していきましょう」