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「重篤ながんになったとしても“医療費が払えなくて苦労した”という声はあまり聞きません。日本には『高額療養費制度』という、収入に応じて上限を設けて医療費の負担を抑えてくれる制度がありますから、一般的な保険診療であれば“実費で数百万円”なんてことにはならないのです」

 

こう語るのは、NPO法人「がんと暮らしを考える会」理事長・看護師の賢見卓也さん。

 

「ただし、すべて“病院におまかせ”というわけにはいきません。基本的に、こういった制度は、加入者自らが保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に申請する必要があるからです。とりわけがん患者となると、診断直後は、家族みんなで慌ててしまうこともあるでしょう。だからこそ、元気なうちから、医療費についての制度とその手続きの仕方について十分に知っておいていただきたい」

 

社会保険労務士で同会理事でもある石田周平さんは次のように話す。

 

「高額療養費制度では、基本的に『自己負担限度額』以上を支払う必要はありません。たとえば月収50万円の世帯であれば、医療費が100万円かかったとしても、1カ月の上限である8万7,430円で済むわけです」(石田さん)

 

過去に大病を患った人でなくても「高額療養費制度」は必ず知っておくべき知識。制度を熟知することで、あなたの“老後の不安”が一つ消えるかもしれない。そこで賢見さんや石田さんが何度も質問されたことがあるという、高額療養費についての“素朴な疑問”を紹介。

 

【Q1】高額療養費は年何回まで?

 

「回数制限はありませんので、最大で『年12カ月(回)』です。ちなみに自己負担額が過去1年間に3カ月(3回)以上、高額療養費に該当していた場合、4カ月(4回)目からは自己負担限度額が少なくなります」(石田さん)

 

【Q2】高額療養費には時効がある?

 

「診療を受けた日の翌月1日から丸2年間で、高額療養費は消滅します。制度自体を知らなかったり、治った病気のことは忘れてしまったりする人もいますので、各保険者から年数回、郵送される明細『医療費のお知らせ』をしっかりと見ておいてください」(賢見さん)

 

【Q3】入院中の差額ベッド代は?

 

「入院費で保険適用になっていないのが個室代(4床以下の部屋が個室扱い)と食事代で、全額自己負担。保険適用になるのは6人部屋のみです。ただし例外もあり、人を感染させる可能性のある症状や、感染しやすい状態で、個室入院が必要と病院が判断した場合は、請求はされません」(賢見さん)

 

【Q4】家族全員分の医療費を申請する「世帯合算」って何?

 

「世帯のうち2人以上が同月に病気やケガをして受診した場合、1人が複数の病院で受診した場合、1人が同じ病院の『入院』と『外来』を受診した場合は、各2万1,000円を超える自己負担額を世帯で合算することができます。ただし、2人以上の合算をする場合、全員が同一の保険者に所属していなければなりません。共働きで夫婦が違う保険者に加入していれば“世帯合算は無効”となりますので注意してください」(石田さん)

 

最後に賢見さんはこう語る。

 

「『高額療養費』という言葉は知っていても、実際の利用方法は、初めて目にする方も多いはずです。保険者によっては個々のケースで条件が大きく異なることもあるし、制度の改定もあるでしょう。不明点が出るたびごとに、問い合わせることをおすすめします」

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