多くの人が悩まされている腰痛。痛みを克服するために効果的なのは、体の“ウラ面の筋肉”を正しく鍛えること。器具も使わない、簡単だけど高い効果が望める運動をご紹介します――。
今や日本人の8割以上が腰痛持ちともいわれ、そのうち85%の症状が、原因の特定できない「非特異的腰痛」だという。
「多くの場合、姿勢が腰痛に関係しているといえるでしょう。現代人の腰痛には、運動不足、血行不良、肥満などさまざまな理由が考えられますが、姿勢に何らかの問題のある人がほとんどです。1日のうち座っている時間が長い人、パソコンやスマホを使用する時間の多い人などは、姿勢の悪化を招きやすいです。それが、体の裏側の筋肉、いわば“ウラ筋”が弱っていることと関係しています」
こう話すのは、鍼灸師で倉敷芸術科学大学客員教授の内田輝和さん。内田さんはこれまで、プロスポーツ選手やオリンピック選手などトップアスリートの体も見てきた。
体のおなか側をオモテ、背中側をウラと見て、背中、腰、お尻、太もものウラ、ふくらはぎと、ウラ側の筋肉のことをまとめて“ウラ筋”と内田さんは呼んでいる。ウラ筋は、加齢や運動不足などでオモテ筋よりも筋肉量が落ちやすく、それが腰痛につながるのだという。
「ウラ筋が弱い人は、猫背だったり、常に前かがみの姿勢になっています。体が前に傾くとき、バランスをとろうと背中やお尻の筋肉を緊張させて体を支えようとするのですが、ウラ筋が弱いため、腰に無理な力が加わり、負担が蓄積されて腰痛となって現れるのです」(内田さん・以下同)
筋肉の衰えを防ごうと、ストレッチや筋トレ、ウオーキングなど運動習慣に励んでも、腰痛が改善されないという人が後を絶たない。これは、どんなに歩いてもウラ筋がきちんと鍛えられていないためだと内田さんは指摘する。
このウラ筋を鍛えるために、簡単な運動ながら高い効果が望めるのが、内田さんが考案した「1分バタ足運動」だ。うつぶせに寝て、片方の足を上げて10秒キープ。これを左右交互に行った後、お尻の穴をキュッと締める。この一連の動作を1分程度行うだけ。この運動で、お尻(大殿筋)と太もものウラ(大腿二頭筋)の筋力を鍛えることができる。腰に負担がかからず、誰でも行えるエクササイズだ。
【1分バタ足】
1)うつぶせに寝て、足を伸ばす。両腕は軽く重ねてあごの上につける(首が痛い人はあごを引き、腕におでこを当てる)。
2)つま先とひざをまっすぐ伸ばしたまま、片足をできる範囲で上げて、10秒間キープ。このとき、お尻と太もものウラ側の筋肉が使われていることを意識する。
3)2で10秒キープしたら、反対側の足を同じように上げて10秒間キープ。
4)10秒たったら足を下ろし、両足をつけた状態で、お尻に力を入れて肛門をギュッと締めて、10秒間キープ。1~4を2回繰り返して1セット(1分)。1日2セット行うとより効果的。
※足があまり上がらない人、10秒キープが難しいという人も、床からほんの少し足を浮かすだけでも負荷はかかるので、できる範囲で続けるようにする。
「負荷を上げたい人は、足をできるだけ高く上げるようにしてみましょう。そうすることで、背中、ふくらはぎまで筋力アップが期待できます。また、実際にやってみると、足を上げるとき、得意なほう、不得意なほうがあることに気づくはず。これは、上げにくいほうのお尻の筋肉が弱い証拠です。不得意なほうを3~4回多めに行うとバランスが改善できます」
腰の痛みの強い人、ぎっくり腰などで足が上がらない人は、無理をせず、お尻の穴をキュッと締めるだけでも効果が望める。脊椎管狭窄症や座骨神経痛などの疾患でも、ウラ筋が強化されるにつれ、痛みが軽減されていくそうだ。早い人で即日、毎日やっていると1週間もすれば変化を感じるようになるという。3カ月も続ければ、しっかりと筋肉がついて、背筋が伸びた姿勢になる。
「筋肉ができてくると、腰痛だけでなく、冷え性が改善されたり、長時間立っていても疲れにくくなります。何歳になっても筋肉は鍛えられますから、毎日の運動を習慣にしてください」
ビシッとした姿勢で、イキイキとした生活を送るため、日常生活にバタ足を取り入れていこう!