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長引くコロナ禍により、人々の暮らしが傷付けられた2020年は、これまで以上に他人の「痛み」に思いを馳せることが多かったはず。今年もそんな思いを忘れることなく、「人のため」に行動できる大人でありたいものだ。家にいながら、遠くの誰かの助けになれる。“おトク”だけにとどまらない、ふるさと納税の新しいスタンダードを紹介ーー。

 

新型コロナウイルスが世界中で感染拡大を始めてから約1年。日本では昨年4月に最初の緊急事態宣言が発出され、不要不急の外出自粛が呼びかけられると、繁華街や観光地から人が消えた。

 

その影響を受け、宿泊施設、飲食店、食品卸売業者、生産者など広い業種で売り上げが激減。さらに昨秋の感染拡大の第3波にともないGo To トラベルが一時停止されるなど、苦境に立たされる事業者は増加の一途をたどっている。

 

こうした状況を背景に、ふるさと納税では被害を受けた自治体や事業者を支援する動きが拡大中。ふるさと納税サイト「さとふる」広報の谷口明香さんはこう話す。

 

「多くの自治体で行き場を失った商品を『緊急支援品』と銘打ち、値崩れしたぶん増量する、寄付額を低く設定するなどの取り組みを行っています。昨年3月から5月にかけて『応援』『支援』と付く返礼品の登録数が増え、5月にはサイト内での『緊急支援品』の検索数が一気に伸びました。以来、利用者の方の関心も高まっているようです」

 

いっぽうで、返礼品のない完全寄付型のふるさと納税も注目されている。さとふるでは、現在、栃木県、大阪府、山口県など14の自治体へ新型コロナウイルス医療対策支援の寄付が可能。ふるさと納税を通じて、医療従事者や医療関連の事業者を応援することができる。

 

「大阪府では寄付金をもとに、新型コロナウイルス感染症に関する医療や療養に尽力している医療従事者やホテル従業員等への応援として、メッセージカードとクオカードなどを贈呈しています。自治体によって寄付金の使い道や支援の形が異なるので、サイトに掲載されている自治体のメッセージを読み、共感できるところに寄付するといいのでは」(谷口さん)

 

もともとふるさと納税では納税者が寄付金の使い道を選べる仕組みがあり、子どもの教育や環境保全、文化財の保護など、支援したいテーマを選ぶことができる。だが、数年前から使い道をより明確にしたクラウドファンディング型のふるさと納税が登場している。

 

クラウドファンディングとは、「新商品を開発したい」「環境保護のための取り組みを始めたい」など、具体的なアイデアや目的を持つ人が、インターネットを通じて自身の活動をPRし、賛同する不特定多数の人から資金を集める仕組みだ。

 

「ふるさと納税でもこの仕組みを取り入れ、特定の文化財修繕や、障害者の支援事業といった参加自治体のニーズに合わせた資金を集めています。コロナ禍の今、とくに目立つのは子ども支援をテーマにしたもので、『さとふる』のクラウドファンディングページにも、子どもたちに無償、または低料金で食事を提供する『子ども食堂』事業への支援、貧困家庭への食糧支援などのプロジェクトが並んでいます」(前出・谷口さん)

 

「ふるさとチョイス」のクラウドファンディングページでは、動物保護への支援も注目を集めている。コロナ禍による巣ごもり需要でペットを求める人が増える半面、経済的な事情からペットを手放すケースも相次いでおり、多くの自治体で、殺処分をゼロにするための取り組みや、動物保護施設への寄付を募っている。

 

クラウドファンディング型のふるさと納税で窮地を切り抜けた事業者の1つが、千葉県銚子市の民間鉄道会社「銚子電気鉄道」だ。

 

銚子電気鉄道は、大正12年に開業した全長6.4キロの小さな鉄道会社。「銚電」の愛称で知られ、市民の生活の足、また観光列車としても活躍しているが、近年、利用者が減り、厳しい経営状況が続いている。

 

これまでも鉄道員が考案した「ぬれ煎餅」の売り上げなどで廃線の危機を乗り切ってきたが、’18年、またもやピンチに遭遇。銚子電気鉄道代表取締役社長の竹本勝紀さんは当時をこう振り返る。

 

「これまで車両の定期検査には国から補助金が支給されていましたが、国の予算の都合上、’18年からなくなってしまったんです。車両検査には約1,500万円と高額な費用がかかります。補助金なしでは3編成あるうちの1編成の検査を諦めざるをえません。するとダイヤは維持できず、市民の足として機能しなくなってしまいます。そこで銚子市と協力し、『さとふる』上でクラウドファンディングを実施し、車両検査費用の寄付を募ることにしたんです」

 

「銚子市を元気にするため、銚電を続けていきたい!」と銘打ったこのクラウドファンディングは約3カ月半にわたり実施。全国の銚電ファンから約152万円が集まり、車両検査費用の一部に充てることができたという。

 

「デジタルの世界の向こうには、温かい人の心があると感じました。皆さんからの寄付と応援に感謝し、これからも市民の足、銚子観光のシンボルとして銚電の使命を果たしていきます」

 

なお、昨年は新型コロナ感染拡大の影響を受け、4〜6月の乗客が前年比マイナス95%まで落ち込んだ。今も危機的な状況が続き、ネットショップでぬれ煎餅やグッズの販売に力を入れるなどして、生命線をつないでいる。

 

現在、クラウドファンディングは行っていないが、銚子市へふるさと納税を行う際に、寄付金の使い道として「銚子電気鉄道応援事業」を選べば、銚子電鉄への支援が行える。

 

「銚電」のクラウドファンディングを実施した銚子市役所の担当者はこう話す。

 

「具体的な使い道を希望する納税者の方は少なくありません。市の窓口に出向いて『お世話になった病院のために役立ててほしい』など使い道を指定される方もいらっしゃいます。そうした希望に応えつつ、今後もクラウドファンディング型のふるさと納税は実施していきたいと考えています」

 

「女性自身」2021年2月2日号 掲載

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